哀歌1章1節~22節
1章の構成
a) エレミヤの哀歌
・都市の荒廃:1~7節
・都市の罪:8節~11節
b) エルサレムの哀歌
・神による苦難:12節~15節
・エルサレムの告白:16節~19節
・エルサレムの嘆願:20節~22節
1節:ああ、ひとり寂しく座っている。人で満ちていた都が。彼女はやもめのようになった。国々の間で力に満ちていた者、もろもろの州の女王が、苦役に服することになった。
א「aleph」
アクロスティックワード:eichah 、ake 「ああ」 不平、驚き、困惑した悲嘆の思い。
※どうして諸国の中でも偉大な王女エルサレムが、未亡人・奴隷のようになったのか!
2節:彼女は泣きながら夜を過ごす。涙が頬を伝っている。彼女が愛する者たちの中には、慰める者はだれもいない。その友もみな裏切り、彼女の敵となってしまった。
ב「bet」
アクロスティックワード:bachah、baka 「泣く」 文中に2度出現→2重の嘆き(泣きながら泣く)
※彼女を慰める者は一人もいない。ユダが追いかけたどの諸国も裏切る。エレ3:1
※ユダが周辺国と同盟関係に努力しても、結局は孤立し、敵となる。
3節:悩みと多くの労役の後に、ユダは捕らえ移された。彼女は諸国の中に住み、憩いを見出すことがない。追い迫る者たちはみな追いついた。彼女が苦しみのただ中にあるときに。
ג「gimmel」
アクロスティックワード:galah、gala 「捕囚となった」「除去」→捕囚は苦難、圧迫を意味する。
※ユダに安息はない。追い詰められ苦難の上にバビロンは追い迫り、攻め尽くす。
4節:シオンへの道は喪に服し、例祭に行く者はだれもいない。その門はみな荒れ果て、その祭司たちはうめく。おとめたちは憂いに沈む。シオンが苦しんでいるのだ。
ד「dalet」
アクロスティックワード:darchei, derek 「道路」「道」
※祭りでも、道に巡礼者がいない都市。
※祭司、世話係(女性の世話係であるおとめ)の仕事がない。町は失望状態。
5節:彼女に逆らう者がかしらとなり、彼女の敵が栄えている。彼女の多くの背きのゆえに、主が憂いを与えられたのだ。幼子たちも、捕らわれの身となり、逆らう者の前に出て行った。
ה「hey」
アクロスティックワード:hayu, haya 「なる」「起こる」
※バビロンが、エルサレムの支配者となる。モーセ契約に従えば、こうはならなかった。
※律法違反の結果として、捕囚となった。
6節:娘シオンから、そのすべての輝きが去った。彼女の首長たちは、青草を見出せない鹿のようになり、追い迫る者の前をただ力無く歩んで行った。
ו「vav」
アクロスティックワード:vayeitzei, yatsa 「そして去った」「外に出る」→神の栄光が去った。
※上層部はうろたえ、食糧は見出せず、民とは分離していた。
7節:エルサレムは思い出す。苦しみとさすらいの日々にあって、昔から持っていた自分のすべての宝を。その民が敵の手に倒れ、だれも助ける者がいないとき、敵はその破滅を見て、あざ笑う。
ז「zayin」
アクロスティックワード:zachrah, zakar 「思い出す」
※エルサレムは捕囚となって、自分が昔から持っていた宝を思い出す。(約束の地)
※「さすらいの日々」→「さまようユダヤ人」「放浪のユダヤ人」の概念が始まる。
※「破滅」→「荒廃」→(ヘ)ミシュバットは(ヘ)シャバット(安息日)に由来することば。→「ユダの敵はエルサレムの安息日を嘲笑した」とも解釈できる。→自国にいるときは安息日、安息年を守らず、捕囚先で守るとは、なんと愚かなことか!
8節:エルサレムは罪に罪を重ねた。そのため、汚らわしいものとなった。彼女を尊んだ者たちはみな、その裸を見て、これを卑しめる。彼女もうめいて、その背を向ける。
ח「chet」
アクロスティックワード:chet, het(khate) 「ひどく罪を犯した」 エルサレム荒廃の原因。
※「汚らわしい」・・(ヘ)niddah 女性の不浄期間 レビ15:19。
※ひどい罪を重ね、汚れてしまったエルサレム。「裸」は不名誉の印。
※彼女を尊んだ者たちは拒絶し卑しめた。エルサレム自身もうめき、後悔する。
9節:彼女の汚れは裾に付いている。彼女は自分の末路を考えない。それで、驚くほど落ちぶれて、だれも彼女を慰めない。「主よ、私の苦しみを顧みてください。敵が勝ち誇っています。」
ט「tet」
アクロスティックワード:tumatah, tama(toom-aw) 「汚れ」儀式的、道徳的不浄さ
※「末路」ユダは逆らい続ける自分の将来を考えていなかった。→イザヤ47:7
※「驚くほど落ちぶれて」→破壊は神の御手によるものという意味。
※「慰める者もいない」→神の裁きだから。
※最後にすがるのは神。どうか私(ユダ)を見てくださいと、憐れみを乞う姿。
10節:敵は、彼女が宝としているものすべてにその手を伸ばした。諸国の民がその聖所に入るのを彼女は見た。あなたの集いに加わってはならないと、あなたが命じた者たちが。
י「yad」
アクロスティックワード:yado, yad 「彼の手」 異邦人の聖所への侵入。
※至聖所に入れるのは大祭司のみ。年に1回、ヨム・キプル(贖罪の日)。→大祭司以外が入れば処刑。しかし、すでにシャカイナグローリは去っていたので、 異邦人が至聖所に侵入しても即、裁きの対象とはならなかった。
11節:彼女の民はみなうめき、食べ物を探している。気力を取り戻そうとして、自分の宝を食物に換えている。「主よ、よく見てください。私は卑しい女になりました。」
כ「kaph」
アクロスティックワード:kol, kol(kole) 「全て」
※エルサレムで経験した飢饉の全体性を強調。「全ての民が・・」ということ。
※何とか生きるために、自分の財産を手渡した。
※「それは卑しい姿」・・神の宝を差し出すこととなったから。
※「私はいかに落ちぶれてしまったことか・・主よ、見てあわれんでください。」
12節:あなたがたには関係がないのか。道行くすべての人よ、よく見よ。このような苦痛がほかにあるか。私が被り、主の燃える怒りの日に主が私を悩ませたような苦痛が。
ל「lamed」
アクロスティックワード:lo, 「無」
※私、エルサレムが道行く人々に、「こんな苦痛は今まであっただろうか」と尋ねる。
※エルサレムは聖なる都市、しかし今はそうではない。その原因はエルサレムの罪。
13節:主はいと高き所から私の骨の中に火を送り込まれた。私の足もとに網を張り、私が背を向けるようにされた。私を荒れすさんだ女、終日、病んでいる女とされた。
מ「mem」
アクロスティックワード:mimarom, marom 「高き神(高き所)から」
※エルサレムは、天から彼女に罰が下り、火によって裁かれたことを認識した。
※うつ伏せに倒れて、脱出不可能となった姿。
※エルサレムは荒廃させられてしまった。
14節:私の背きのくびきは重く、主の手で、私に結びつけられ、私の首の上に載せられた。主は私の力をくじき、私を渡された。私が立ち向かえない者の手に。
נ「nun」
アクロスティックワード:niskad, saqad 「縛られている」「結ばれる」
※自分の罪の結果として、神のくびきが非常に重く結びつけられている。
※バビロン捕囚となった。
15節:主は、私のうちの強者たちをみな追い払われた。私を標的として「例祭」を呼びかけ、私の若い男たちを滅ぼされた。主は、ぶどう踏みをするように、おとめ、娘ユダを踏みつぶされた。
ס「samek」
アクロスティックワード:sillah, sala 「無に帰した」「拒絶」
※若いエルサレムの兵士たちは、神の御手により無に帰した。
※例祭→聖戦として呼びかけ、エルサレムの若者を皆、神は裁かれた。
※ブドウ踏み→主に神の怒りの象徴。イザ63:3、黙14:19。
※液と皮が選別されるように、捕囚民と残る者が選別されるという意味。
16節:これらのことで、私は泣いている。私の目、この目から涙があふれる。元気づけ、慰めてくれる者が、私から遠く離れたからだ。敵に圧倒されて、私の子らは啞然とする。
ע「ayin」
アクロスティックワード:(ヘ)al 「~のために」・・原因・・これらのために泣く
※「泣く」という描写が繰り返されている。→悲しみの深さを示す。エレミヤ独特の表現。
※慰め励ます究極のお方は神。その神がそれを拒否された。
※エルサレムの子ら(人々)は、敵の激しい攻めを、ただ見ているしかないような状態。
17節:シオンが両手を差し出しても、これを慰める者はいない。主は、ヤコブの周囲の者たちが彼の敵となるように命じられた。エルサレムは彼らの間で汚らわしいものとなった。
פ「pey」
アクロスティックワード:(ヘ)peirsah, paras 「広がる」・・両手を広げて
※エルサレムを慰める者はだれもいない。
※神はヤコブの周辺諸国を利用した。周辺諸国はイスラエルと同盟関係にあった。
※神から捨てられた結果、エルサレムは諸国の間で不浄の者となった。
18節:主は正しい方である。しかし、私は主の命令に逆らった。すべての国々の民よ、聞け。私の苦痛を見よ。若い女たちも、若い男たちも、捕らわれの身となって行った。
צ「tzadi」
アクロスティックワード:tzaddik, sadiq(tsa-deek) 「正しい」
※エルサレムは、神は正しいお方であることを認めた。
※エルサレムは意図的に神に反し、その結果に、現在苦しんでいる。
※周辺諸国に苦痛を示すのは、不従順による裁きを見て学べ、ということであろう。
※若い男女が捕囚されたことで締めくくっている。
19節:私は、私を愛する者たちを呼んだが、彼らは私を欺いた。私の祭司も長老たちも、都の中で息絶えた。気力を取り戻そうとして、食物を探していたときに。
ק「koph」
アクロスティックワード:karati, qara 「私は呼んだ」・・諸国を呼んだが
※「愛する者たち」・・同盟を結んでいた諸国。何の助けにもならなかった。
※宗教・政治指導者の両方が城内で死ぬ。食料も探せずに。
20節:「主よ、ご覧ください。私は苦しみの中にあり、はらわたはかき回され、私の心は私のうちで打ちのめされています。私が逆らい続けたからです。外では剣が子を奪い、家の中は死のようです。
ר「resh」
アクロスティックワード:raah「見る」
※エルサレムの慰めの嘆願は神に向かう。この苦しみを見てほしいと嘆願する。
※エルサレムは神への反抗を悔いているが、すでに遅く、都市の外、内に死体山積。
21節:私のうめきを聞いても、慰めてくれる者はだれもいません。敵はみな、私のわざわいを聞いて喜びました。あなたがそうなさったからです。あなたが告げられた日を来させてください。彼らも私と同じようになるために。
ש「shin」
アクロスティックワード:shamu, sama(shaw-mah) 「聞いた」
※周辺諸国は、都市の嘆きを聞いても無視するどころか、むしろ喜んだ。
※かつて神はエルサレムを守ったが、今は神にエルサレムが破壊される結果となった。
※そんな状況にありながら、異邦人に裁きが下される日が来ることを確信していた。→アブラハム契約に基づく。「呪う者は呪われる」
22節:彼らの悪のすべてが、御前に出されますように。そして彼らに報いてください。あなたが、私のすべての背きに対して報いを返されたように。私のうめきは大きく、私の心は弱っています。」
ת「tav」
アクロスティックワード:tavo, bo 「来させよ」
※諸国の悪を神の御前に来させてください。
※自身と同様に、諸国の罪の露呈を求めている。 →エルサレムは、罪によって苦しみを受けたことを認めている。・・悔い改め。
※最終的な神の裁きに希望をもっていることを示している。
1章は、やがて来る約束された審判の日への祈りで終わっている。
『正しい恐れを持とう』
・かつて、イスラエルの神はとんでもない奇蹟をなさった。その神の民として、まるで虎の威を借るの如く、それを誇りつつ、全く神に心が向いておらず、形ばかりのイスラエルの民。
・そんな民の実態が公になり、イスラエルの民は、神の一切の守りを受けることなく国を追われ、国を失い、過去の栄光をも台無しにしてしまった。
・神は、モーセ契約の違反を怒っている。その違反に対し厳しい裁きをなさり、そこで民の回心を期待したのだ。彼らが回心すれば、神はいつでも民を回復させ、神の栄光を示されるお方。
・人は目に見える存在の最高点に魅了されるもの。しかし私たちは、目に見えずしかも全てを支配される存在を知った。見下すこと無きよう、正しい恐れを持って、この神に信頼しましょう!
「だれも二人の主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛することになるか、一方を重んじて他方を軽んじることになります。あなたがたは神と富とに仕えることはできません。」マタイ 6章24節