エレミヤ書41章4節~42章6節
イシュマエルは部下と共に、歓待された食事の席で、総督ゲダルヤをはじめユダヤ人やカルデヤ人の戦闘員を皆殺しにした。
4節:ゲダルヤが殺された次の日、まだ、だれもそれを知らなかったとき、
5節:シェケム、シロ、サマリアから八十人の者がやって来た。彼らはみな、ひげを剃り、衣を引き裂き、身に傷をつけ、穀物のささげ物や乳香を手にして、主の宮に持って行こうとしていた。
・イシュマエルの残虐行為は、翌日になっても公にはなっていなかった。皆殺しだから。
・「シェケム・シロ・サマリア」は北イスラエルの偶像礼拝の中心地。聖書地図4,6参照
※アッシリヤ捕囚で残った人々の一部がエルサレムに礼拝に来ていた。総勢80人。
※神殿崩壊を嘆き、髭をそり、服を破り、身体に傷をつけて、悲しみを表現。ただし、体に傷をつけるのは異教徒の習慣で、律法違反。レビ19:28など。
・彼らはささげものをもってエルサレムに向かいミツパを通り過ぎようとしていた。
※第7の月は、本来なら、ヨム・キプール(贖罪の日)、仮庵の祭りなどがあった。
6節:ネタンヤの子イシュマエルは、彼らを迎えにミツパを出て、泣きながら歩いて行った。そして、彼らに出会ったとき、「アヒカムの子ゲダルヤのところにおいでください」と言った。
7節:彼らが町の中に入ったとき、ネタンヤの子イシュマエルと、彼とともにいた部下たちは、彼らを殺して穴の中に投げ入れた。
・イシュマエルは、ミツパを出て彼らと合流し、彼らをゲダルヤに会うようミツパに招いた。
※イシュマエルは、エルサレムのことで喪に服しているように装って、彼らに近づいた。
・イシュマエルは、ミツパに入ると、その80人を殺しにかかった。
・「穴」・・(ヘ)bar・・「貯水槽」。死体はそこに投げ入れられた。
※イシュマエルが彼らを殺す理由は明確でないが、彼が残忍な性格であるということは分かる。
8節:彼らのうちの十人がイシュマエルに、「私たちを殺さないでください。私たちには、小麦、大麦、油、蜜など、畑に隠されたものがありますから」と言ったので、彼は、彼らをその仲間とともに殺すのをやめた。
・そのうちの10人が「自分たちの畑には、農産物がある」と言って命乞いをした。
・イシュマエルはその10人は殺さなかった。→捕囚し、奴隷として売りさばく計画。
9節:イシュマエルが、ゲダルヤの指揮下にあった人々を打ち殺し、その死体すべてを投げ入れた穴は、アサ王がイスラエルの王バアシャに備えて作ったものであった。ネタンヤの子イシュマエルはそれを、殺された者で満たした。
・死体を投げ入れた貯水槽について・・
※Ⅰ列15:16~・・300年前に、アサ王(南ユダ)とバアシャ王(北イスラエル)の間で争いがあり、その時アサ王が備えのために造ったもの。
※Ⅱ歴16:1~6・・アサ王とバアシャ王の間には、多くの争いがあった。
・イシュマエルは、その貯水槽を多くの死体でいっぱいにした。
10節:イシュマエルは、ミツパにいた民の残りの者たち、すなわち王の娘たち、および親衛隊の長ネブザルアダンがアヒカムの子ゲダルヤに委ねた、ミツパに残っていたすべての民を捕らわれの身とした。ネタンヤの子イシュマエルは彼らを捕囚にして、アンモン人のところに渡ろうとして出発した。
・イシュマエルは、ミツパにいた残りの民(王の娘、エレミヤやバルクなど)を捕囚した。
・彼らをアンモン人に奴隷として売渡す算段で、アンモンに出発する。
※イシュマエルはどこまでも物質的欲望に駆られる人物であった。
11節:しかし、カレアハの子ヨハナンと、彼とともにいた軍のすべての高官たちは、ネタンヤの子イシュマエルが行ったすべての悪を聞くと、
12節:部下をみな連れて、ネタンヤの子イシュマエルと戦うために出て行き、ギブオンにある大池のほとりで彼を見つけた。
・イシュマエルの残虐行為を聞いたヨハナンと高官たちは、彼を追跡する。
・「ギブオン」・・ミツパの南、ラマの南西。
・ヨハナンは「ギブオンの大池」でイシュマエルに追いついた。
※ギブオンからアンモンまでは、あと2~3日の距離。
13節:イシュマエルとともにいたすべての民は、カレアハの子ヨハナンと、彼とともにいるすべての高官を見て喜んだ。
14節:こうして、イシュマエルがミツパから捕らえて来た民のすべては身を翻し、カレアハの子ヨハナンの側についた。
15節:ネタンヤの子イシュマエルは、八人の者とともにヨハナンの前から逃れ、アンモン人のところへ行った。
・イシュマエルの捕囚民たちは、ヨハナンを見て喜び、一斉に彼の方へ走り移った。
※イシュマエルの兵士たちは、ヨハナンらの攻撃を防ぐのに精一杯だったのだろう。
・最後に残ったのはイシュマエルと8人の兵士。彼らはアンモンへ逃れていった。
※聖書的には二度と登場しない。イシュマエルの兵士の生死は不明。
16節:ネタンヤの子イシュマエルがアヒカムの子ゲダルヤを打ち殺した後、カレアハの子ヨハナンと、彼とともにいたすべての高官たちは、ネタンヤの子イシュマエルから取り返したすべての残りの民、すなわちギブオンから連れ帰った勇士たち、戦士たち、女たち、子どもたち、および宦官たちを連れて、ミツパから
17節:エジプトに行こうとして、ベツレヘムの傍らにあるゲルテ・キムハムへ行き、そこにとどまった。
・ヨハナンのグループは、イシュマエルの捕囚民を取り返した。(ミツパの訳に要注意)→
一旦ミツパに戻ってエジプトに向かったのではなく、ギブオンからエジプトに向かっていたと思われる。
・武器のない兵士、女性たち、子供たち、王の娘を見る宦官たちであった。
・「ゲルテ・キムハム」・・キムハムの住まいの意。ベツレヘム近郊の隊商宿。詳細は不明。※Ⅱサム19:37・・「霊的な岐路の場所」・・バルジライの行動から、判断を下す場所とされる。
※彼らは焼け落ちたエルサレムを既に通り過ぎてきた。(迷信が心をよぎる:エレ7:4)
※エジプトに向けて、彼らは、エルサレムよりも更に南下している。
18節:バビロンの王がこの地の総督としたアヒカムの子ゲダルヤを、ネタンヤの子イシュマエルが打ち殺したため、カルデア人を恐れたからである。
・ヨハナンたちの恐れ・・ゲダルヤやカルデア人が殺され、バビロン王の侵略再開を恐れた。※新たな虐殺と、残りのユダヤの民の捕囚という恐れ。
42章
1節:軍のすべての高官たち、カレアハの子ヨハナン、ホシャヤの子イザンヤ、および身分の低い者も高い者もみな近づいて来て、
2節:預言者エレミヤに言った。「どうか、私たちの願いを受け入れてください。私たちのため、この残りの者すべてのために、あなたの神、主に祈ってください。ご覧のとおり、多くの者の中からわずかに私たちだけが残ったのです。
・ヨハナンやイザンヤ(40:8のエザンヤと同一人物)は全体のリーダー的存在。
・全員がエレミヤのもとに来た。捕囚された集団の中にエレミヤ、バルクがいた。
・残されたユダヤ人(ここにいるユダヤ人)のために、エレミヤに祈りを要請した。
3節:あなたの神、主が、私たちの歩むべき道と、なすべきことを私たちに告げてくださいますように。」
4節:そこで、預言者エレミヤは彼らに言った。「承知しました。見よ。私は、あなたがたのことばのとおり、あなたがたの神、主に祈り、主があなたがたにお答えになることはみな、あなたがたに告げましょう。あなたがたには何事も隠しません。」
・祈りの目的→今後の自分たちの身の振り方を教えてほしい。
※エレミヤの預言の正確性はすでに皆、経験済み。
※問題は、彼らがエジプト行きを決めているということ。エレミヤの肯定的答えを期待。
・エレミヤは祈りの要請を承諾。
・神のメッセージの内容がどうであれ、明確に神のみことばを伝えることを約束する。
5節:彼らはエレミヤに言った。「主が、私たちの間で真実で確かな証人であられますように。私たちは必ず、あなたの神、主が私たちのためにあなたを遣わして告げられることばのとおりに、すべて行います。
6節:それが良くても悪くても、私たちは、あなたを遣わされた私たちの神、主の御声に聞き従います。私たちの神、主の御声に聞き従って幸せを得るためです。」
・「すべて行います。」→人々は、エレミヤの言葉に従うことを確約する。
・「内容が良くても悪くても、主の御声に従って幸せになるために、聞き従います!」
※自分たちの思いと神の思いが一致していると考えた応答としか思えない。
『ブレない信仰』
・イシュマエルは、残虐な行為をする人物。とても神を信じる者とは言えない。時代の変化のせいなのか、もともとの性格なのかは不明だが、ダビデの王族でも、信仰者であるかは別である。
・そんな、イシュマエルとは異なり、神の民の一員という姿勢でイシュマエルに立ち向かったヨハナンと高官たち。残り少なくなったユダヤの民を守ろうとする意志が感じられる。
・そのヨハナンたちは、エルサレムまたはその近郊を通り、破壊された神殿という事実を見てどのように反応しただろう。神殿破壊は、人々の心の状態を確認させる試金石となったのではないか。
・イエス様は、豪華な第二神殿を前にして、弟子たちに未来を預言された。目に見えることに左右されず、神を信じる者が、永遠のいのちを得るという厳然たる事実を示された。(マタイ24、25章)
「私たちの一時の軽い苦難は、それとは比べものにならないほど重い永遠の栄光を、私たちにもたらすのです。私たちは、見えるものにではなく、見えないものに目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものは永遠に続くからです。」コリント第2 4章17~18節