エレミヤ書40章1節~41章3節
エルサレム崩壊後、残った人々の管理の為、ゲダルヤがユダの総督(知事)となります。ゲダルヤはミツパに本部を置き、そこで事件が起こります。
1節:主からエレミヤにあったことば。バビロンへ引いて行かれるエルサレムとユダの捕囚の民の間で鎖につながれていたエレミヤを、親衛隊の長ネブザルアダンがラマから釈放した後のことである。
・ラマでエレミヤが捕囚から解放されたことを記述している。
※エルサレム陥落後、エレミヤがゲダルヤの保護下にあった後の出来事である。
<ここに至った経緯>
都市陥落後の混乱もあり、エレミヤに対するネブカドネツァル王の命令が末端の兵士に行き届かず、出歩いていたエレミヤを捕囚民と勘違いしラマに連行して行ったようである。
ラマは、各地の捕囚民を一旦集結させ、その後、各地に分散させる場所だった。親衛隊長はラマでエレミヤを発見し、彼を釈放したのである。(ラマ・・エレ31:15)
2節:親衛隊の長はエレミヤを連れ出して、彼に言った。「あなたの神、主は、この場所にこのわざわいを下すと語られた。
3節:そして主はこれを下し、語ったとおりに行われた。あなたがたが主の前に罪ある者となり、その御声に聞き従わなかったので、このことがあなたがたに下ったのだ。
・親衛隊長のエレミヤへの言葉。
・切り出しは「神がこの地にわざわいを与えた」であった。
・この親衛隊の長は、イスラエルの神を主(エホバ)と呼んでいる。
・「民がエホバを裏切り、そのことがエホバによって裁かれた。」と言っている。
※イスラエルの神を信じていた様子はないが、霊的な目を持つ親衛隊長。
※ゲマラによれば、ネブザルアダンはイスラエルの神に改宗したとの記述がある。
4節:そこで今、見よ、私は今日、あなたの手にある鎖を解いて、あなたを釈放する。もし私とともにバビロンへ行くのがよいと思うなら、行きなさい。私があなたの世話をしよう。しかし、もし私と一緒にバビロンへ行くのが気に入らないなら、やめなさい。見なさい。全地はあなたの前に広がっている。あなたが行ってよいと思う、気に入ったところへ行きなさい。」
・ここでネブザルアダンはエレミヤに選択肢を示す。(王の命令が生きている)
①バビロンに行く→ネブザルアダンが面倒を見る。エレミヤの年齢は66~71歳。
②エレミヤの行きたいところへ行く→晴れて自由の身。エルサレムに帰ることも可。
※いずれにしても、エレミヤは異邦人には敬意を払われている。
5節:しかしエレミヤがまだ帰ろうとしないので、「では、バビロンの王がユダの町々を委ねた、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤのところへ帰り、彼とともに民のうちに住みなさい。でなければ、あなたが行くのによいと思うところへ、どこへでも行きなさい。」こうして親衛隊の長は、食糧と品物を与えて、彼を去らせた。
・エレミヤはその質問に返答しなかった。親衛隊長の寛大な申し出にためらっていた。
・ネブザルアダンはエレミヤの思いを察した。
※エレミヤはバビロンでの豊かさよりも、ユダの貧困を選び、民との共存を望んでいる。
・親衛隊長はエレミヤが去るとき、食糧と品物(移動のための金銭も)を与えている。(厚遇を受けている)
6節:そこでエレミヤは、ミツパにいるアヒカムの子ゲダルヤのところに行って、彼とともに、その地に残された民の間に住んだ。
・「ミツパ」・・ベニヤミンの地。ユダの最北端の都市。聖書地図 4(E・5)
※ユダヤの民との生活を選んだエレミヤ。
7節:野にいた軍の高官たちとその部下たちはみな、バビロンの王がアヒカムの子ゲダルヤをその地の総督にして、バビロンに捕らえ移されなかった男、女、子どもたち、その地の貧しい民たちを彼に委ねたことを聞いた。
8節:そして彼らはミツパにいるゲダルヤのもとに来た。ネタンヤの子イシュマエル、カレアハの子ヨハナンとヨナタン、タンフメテの子セラヤ、ネトファ人エファイの子ら、マアカ人の子エザンヤ、そして彼らの部下たちであった。
・「野にいた軍の高官たち」・・ユダヤ人軍隊の野戦部隊(ゲリラ戦)
・彼らは、ネブカドネツァル王がゲダルヤをユダの地の総督に任命したことを知った。
・彼ら(高官と部下たち)はゲダルヤに会うためにミツパに来た。Ⅱ列25:22~23
〇イシュマエル・・(ネタンヤの子)→ダビデの血統の王族
〇ヨハナン、ヨナタン・・(カレアハの子)→一応、神に従う姿勢あり
〇セラヤ・・(タンフメテの子)
〇エファイの子たち・・(ネトファ出身のユダヤ人)→ベツレヘム近郊の町
〇エザンヤ・・(マアカ人)→外国(アラム)系のユダヤ人
9節:シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤは、彼らとその部下たちに誓った。「カルデア人に仕えることを恐れてはならない。この地に住んで、バビロンの王に仕えなさい。そうすれば、あなたがたは幸せになる。
・ゲダルヤは野戦部隊長に、バビロン王に仕えれば幸いになると誓って言う。
※バビロンに従うことはゲダルヤに従うこと。
※ゲダルヤの軍隊に属せば、恩赦が与えられるということ。
10節:この私は、見よ、ミツパに住んで、私たちのところに来るカルデア人の前に立とう。あなたがたは、ぶどう酒、夏の果物、油を収穫して器に納め、自分たちが手に入れた町々に住むがよい。」
・エルサレムは首都の機能なしの状態。ミツパが新しい中心地となった。
※ユダの主要都市は破壊されたが、それ以外は残され、高官が滞在、支配した。
・ゲダルヤは、その部隊とバビロンとの仲介役になることを保証した。
・その見返りとして、ゲダルヤの指揮下に入り、この地で働くことを求めた。
※農作物の収穫作業の働きを王族はどのように受け取るであろうか?
11節:モアブや、アンモン人のところや、エドムや、あらゆる地方にいたユダヤ人もみな、バビロンの王がユダに人を残したこと、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤを彼らの総督に任命したことを聞いた。
12節:そこで、ユダヤ人はみな、散らされていたすべての場所からユダの地に帰って来て、ミツパのゲダルヤのもとに行き、非常に多くのぶどう酒と夏の果物を収穫した。
・多くの難民の帰還が記録されている。
※難民の大多数は、ヨルダン川沿いのモアブ、アンモン、エドムから。他の地からも。
※彼らは、バビロンの王がユダヤ人を土地の指導者にしたことを聞き、ミツパに来た。
・ゲダルヤのもとで、多くのぶどう酒、夏の果実を収穫した。
13節:さて、野にいたカレアハの子ヨハナンと、軍のすべての高官たちは、ミツパのゲダルヤのもとに来て、
14節:彼に言った。「あなたは、アンモン人の王バアリスがネタンヤの子イシュマエルを送って、あなたを打ち殺そうとしているのをご存じですか。」しかし、アヒカムの子ゲダルヤは、彼らの言うことを信じなかった。
・ゲダルヤに殺害の警告をした者たちが示される。
・カレアハの子ヨハナンとその軍の高官たち。(イシュマエルを除く高官たち)
※ヨハナンがリーダーと考えられる。
・アンモン人の王バアリスが、ネタンヤの子イシュマエルを送ってゲダルヤ暗殺を謀っている。
※ユダの不安定化か、アンモンとユダとの併合の画策であろう。詳細は不明。
・ゲダルヤは、この警告を信じなかった。
15節:カレアハの子ヨハナンは、ミツパでひそかにゲダルヤに話して言った。「では、私が行って、ネタンヤの子イシュマエルを、だれにも分からないように打ち殺しましょう。どうして、彼があなたを打ち殺し、あなたのもとに集められた全ユダヤ人が散らされ、ユダの残りの者が滅びてよいでしょうか。」
16節:しかし、アヒカムの子ゲダルヤは、カレアハの子ヨハナンに言った。「そんなことをしてはならない。あなたこそ、イシュマエルについて偽りを語っているからだ。」
・それでもヨハナンはゲダルヤに、イシュマエルの事前の殺害を申し出る。
※ユダの総督の暗殺が、ユダヤ人民にとって壊滅的となると察していた。
・しかし、ゲダルヤは彼を止めた。彼の言うことを信用していなかったから。
※王族に対する何らかの配慮があったのかもしれない。
<豆知識:ゲダルヤの断食の日>
正統派ユダヤ人は、ティシュレー(第7の月:9~10月)の3日目をゲダルヤの断食の日としている。「イシュマエルは、ユダヤの王族がユダヤを統治すべきと考え、ゲダルヤをはじめ、共にいたユダヤ人やカルデア人も殺害した。ここでユダヤ人主権の最後の火が消え、完全なる捕囚が実現した。」これが預言者たちが断食の日を設定した理由である。
※ティシャベ・アブと異なり、軽い断食のようです。
41章
1節:ところが第七の月に、王族の一人、エリシャマの子ネタンヤの子イシュマエルは、王の高官と十人の部下とともに、ミツパにいるアヒカムの子ゲダルヤのもとに来て、ミツパで食事をともにした。
・「第7の月」・・ティシュレー(9~10月)。神殿破壊の2か月後。・・アブ(7~8月)
・エリシャマの子ネタンヤの子イシュマエルと、高官たちと10人の部下がミツパで食事。
※エリシャマ→ダビデの息子の一人・・Ⅰ歴3:8~9、14:7
※王族がユダヤを統治すべき!・・王が平民には従えない!
・ゲダルヤはイシュマエルを歓待している→ヨハナンの警告を完全無視。
※中東では、食事で殺人は企てない。友情の証であり、極めて違反行為とされる。
2節:ネタンヤの子イシュマエルと、彼とともにいた十人の部下は立ち上がって、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤを剣で打ち殺した。イシュマエルは、バビロンの王がこの地の総督にした者を殺した。
3節:ミツパでゲダルヤと一緒にいたすべてのユダの人たちと、そこに居合わせたカルデア人の戦士たちを、イシュマエルは打ち殺した。
・イシュマエルは、バビロン王が任命した総督を殺し、ゲダルヤと共にいたユダヤ人、カルデア人の戦闘員まで殺した。
『神を知れば知るほど・・』
・エレミヤは、ゼデキヤ王に神に信頼するようにと必死に説得した。それはユダ王国の滅びを回避し、エルサレムが存続してほしいという彼の心からの願いから来るものであったのではないか。
・しかし、ゼデキヤ王への説得もむなしく、彼は心を変えることなく時間は過ぎ、城壁は壊され神殿は無残に焼け落ち、エレミヤがずっと見てきた惨たらしい光景が現実となった。
・焼けすたれたエルサレムを眺めるエレミヤに、ゼデキヤ王の悲惨な刑罰の様子が伝えられる。エレミヤは、改めて神の示される預言の確実性、無謬性に心の底からひれ伏したのではなかろうか。
・この時エレミヤは66~71歳。彼は、預言者という特別な立場にありながらも、この歳になって改めて神の大きさにひれ伏す思いになったのではなかろうか。皆さんは今、神をどのように見ていますか?
「ああ、神の知恵と知識の富は、なんと深い事でしょう。神のさばきはなんと知り尽くしがたく、神の道はなんと極めがたいことでしょう。」ローマ 11章33節