エレミヤ書32章1節~15節

時は神殿破壊の前年であるBC587年頃に移ります。なんとエレミヤは投獄の身となっている状態の時、ハナムエルの畑の購入という短期的な預言が示されます。

1節:ユダの王ゼデキヤの第十年、ネブカドネツァルの第十八年に、主からエレミヤにあったことば。

・時系列・・ゼデキヤ王の治世の10年(31歳)。 BC587年頃。

①ユダはこの時、バビロンの属国・・エレミヤはバビロンの属国を続けるよう指示。
②ゼデキヤ王の治世の9年目に、バビロンに反し、エジプトと同盟を結んだ。
③これに対し(怒り)、バビロンのネブカドネツァル王はユダに侵略、エルサレム包囲戦 を開始する(Ⅱ列25:1~3)
④ゼデキヤ王の治世は11年間で終了。BC586年(神殿破壊の年)。
※年代的にはBC589/8~BC587/6の間の神殿破壊の前年にあった出来事。


2節:そのとき、バビロンの王の軍勢がエルサレムを包囲中であって、預言者エレミヤは、ユダの王の宮殿にある監視の庭に監禁されていた。

・バビロン軍がエルサレムを包囲している時。エレ52:4~5から包囲戦の2年目であることが分かる。
・エレミヤは投獄されていた。王宮の監視の庭の獄舎。ちなみにエレミヤは65~70歳
※エレ37:3~21参照
①エルサレム包囲戦の間にエジプトがユダの援軍を出してきたため、バビロンは 包囲軍をエジプトに向け、包囲が一時中断する。
②この時に、エレミヤが捕えられて投獄される。それが32章の状態。→37:21
③エジプトの援軍で、包囲戦が打開するのではという期待があった。
④エレミヤは、エルサレムが占領されるまで投獄される。
エレミヤは、この状況下でも、バビロンに捕囚される預言を語り続けた!

3節:ユダの王ゼデキヤは、エレミヤを監禁するとき、次のように尋ねたのだった。「なぜ、あなたはこのように預言して言うのか。『主はこう言われる。見よ。わたしはこの都をバビロンの王の手に渡す。そして彼はこれを攻め取る。
4節:ユダの王ゼデキヤは、カルデア人の手から逃れることはできない。ゼデキヤは必ずバビロンの王の手に渡され、口と口で彼と語り、目と目で彼を見る。
5節:彼はゼデキヤをバビロンへ連れて行く。そしてゼデキヤは、わたしが彼を顧みるときまでそこにいる──主のことば──。あなたがたはカルデア人と戦っても、勝つことはできない。』」

・エレミヤの投獄理由は、その預言にあることが示される。
・エルサレムがバビロンの手に渡されると預言。
・ゼデキヤ王の捕囚を預言。生きて捕囚される⇒口と口で彼と語り、目と目で彼を見る。
・「顧みる」・・(ヘ)pakad・・訪問する、出席する、任命する、罰する、の意味。
※「裁きと死」を伴う訪問、任命、という意味。→ゼデキヤ王は目の前で子らを殺され、両目をくり抜かれ、死ぬまで鎖につながれた。
バビロンに勝利することはない、と投獄されても預言するエレミヤ。
しかし、市中では偽預言者が偽預言をして一時の栄光に浸っている

6節:エレミヤは言った。「私に、このような主のことばがあった。
7節:『見よ。あなたのおじシャルムの子ハナムエルが、あなたのところに来て、「アナトテにある畑を買ってくれ。あなたには買い戻す権利があるのだから」と言う。』

・そんな経緯から投獄されているエレミヤに、神からの近々起こる短期的預言がある。
・「ハナムエルからの要請がある」・・エレミヤの叔父シャルムの息子
・「アナトテにある畑を買い取ってほしい」・・レビ25:23~25の「買い戻しの権利」。
<ハナムエルの状況>
バビロンの包囲戦の影響でアナトテも占領されて農産物は無く、土地の価値は、当時、そして侵略後も非常に薄いと思われる。ハナムエルは家族のための借金返済のため、土地売買の必要があり、エレミヤがその対象となった。

8節:すると、主のことばのとおり、おじの子ハナムエルが私のところ、監視の庭に来て、私に言った。『どうか、ベニヤミンの地のアナトテにある私の畑を買ってください。あなたには所有権もあり、買い戻す権利もありますから、あなたが買い取ってください。』私は、これが主のことばであると知った。

・預言は成就し、エレミヤはそこに神のメッセージを知った。(ヘ)yada・・経験的に知る。
※「くびき」などの命令された象徴的行動とは異なり、神の預言に対してエレミヤは 信仰によって行動を起した。将来の回復を信じる彼の主体的行動である。

9節:そこで私は、おじの子ハナムエルから、アナトテにある畑を買い取り、彼に銀十七シェケルを払った。

・「銀17シェケルの売買」・・1シェケル=11.5g(聖書巻末11.4g)・・195.5g
※大きさは不明だが、非常に低価格。⇒原因はバビロンの侵略。ハナムエルの生活の困窮さが分かる。

10節:私は証書に署名して封印し、証人を立てて、秤で銀を量った。

・土地の購入手続き→イスラエルの法律と習慣に従って行われた。
・証書に記名し、証人立会いのもと封印し、銀で支払った。

11節:そして、命令と規則にしたがって、封印された購入証書と封印のない証書を取り、
12節:おじの子ハナムエルと、購入証書に署名した証人たちと、監視の庭に座しているすべてのユダの人々の前で、購入証書をマフセヤの子ネリヤの子バルクに渡し、
13節:彼らの前でバルクに命じた。

・土地の購入手続き→イスラエルの法律と習慣に従って行われた。
・2つの証書・・同一のもの。
※封印された証書(改ざん不可)と、未封印の証書の2通。
・証人・・ハナムエル、証書に署名した証人たち、監視の庭にいた人々。
・「バルク」に渡した。※「祝福された」の意味。マフセヤの子ネリヤの子。エレミヤの忠実な随行者、筆記者
・エレミヤは証言者たちの前で、バルクに命じた。

14節:『イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。これらの証書、すなわち封印されたこの購入証書と、封印のない証書を取って土の器の中に入れ、これを長い間、保存せよ。

・これは神の命じること。
・2通の契約証書を、「土の器」に入れて長期保存せよ
※死海文書が長期保存されたように、何世紀にもわたって保存される。
無価値な契約が長期的には有益になる

15節:なぜなら──イスラエルの神、万軍の主はこう言われる──再びこの地で、家や、畑や、ぶどう畑が買われるようになるからだ。』

・エレミヤはユダの荒廃を預言し、実際に土地価格は下落している状態。
・神は、今は二束三文の土地だが、将来この地を回復される。
・家、土地、畑、ぶどう畑は買われるようになる。価値を取り戻す。

エレミヤは神のみこころを、民に宣言したのである。

 

『霊の親』
・ゼデキヤ王は、21歳でバビロンの王ネブカドネツァルにユダの王を任命された。はじめはエレミヤの忠告もあり、バビロンの属国を維持したが、年齢も30歳になる頃には、考えが変わる。
・彼は偽預言者に振り回され、エジプトと同盟し、一時は良さそうに見えたが、すぐに神殿破壊され、国が滅亡してしまう。彼は何に従うかを見失い、悲惨な人生の結末を迎えることになる。
・人は一般的に、子供の頃は親の言いつけに従う。その後、自分の考えに従って行動する。しかしクリスチャンは、真の霊的親である神に従う信仰的行動をとるべきではないか。
・イエス様にならい、はじめは肉の親に導かれて成長し、その後、霊の親である神に導かれて、創造された本来の生き方である愛の人生を目指して歩もうではないか。
「肉の父はわずかの間、自分が良いと思うことにしたがって私たちを訓練しましたが、霊の父は私たちの益のために、私たちをご自分の聖さに与らせようとして訓練されるのです。」ヘブル12:10  

2025年12月18日