エレミヤ書30章1節~11節
第二次大捕囚の直後(BC596年)であろう。これまでとは異なる将来の回復の預言が、神からエレミヤに示される。エレミヤ書の珠玉の預言箇所と言えるのかもしれない。
1節:主からエレミヤにあったことばは、次のとおりである。
2節:イスラエルの神、主はこう言われる。「わたしがあなたに語ったことばをみな、書物に書き記せ。
・神からエレミヤに語られたことば。→イスラエル国家の将来の回復について。
・そのことばを書物に書き記せ!・・(ヘ)ketav lecha・・「自分の為に書く」の意味。
これまで否定的な預言ばかりだったが、肯定的な喜ばしい希望の預言はエレミヤにとっても嬉しい内容であり、それゆえ、エレミヤのために書き記せと命じたのであろう。
3節:見よ、その時代が来る──主のことば──。そのとき、わたしはわたしの民イスラエルとユダを回復させる──主は言われる──。わたしは彼らを、その父祖に与えた地に帰らせる。彼らはそれを所有する。」
・回復の預言の要約が語られる。
・イスラエルとユダを回復させる!先祖の地に帰らせ所有させるという神の宣言。
※この回復はイスラエルの全部族が約束の地に戻る時を指す。
※バビロン捕囚からの回復ではない。
4節:主がイスラエルとユダについて語られたことばは次のとおりである。
5節:まことに主はこう言われる。「恐れてわななく声を、われわれは聞いた。『恐怖だ。平安がない』と。
・神がイスラエルとユダに語られたことばが以降に示される。
・恐怖のみで、平和のない状況にわななく声がする。
※それは7節の「大いなる日」であり、大患難時代を指している。
※新共同では「バビロン捕囚解放の日」としている。 →「大いなる日」、「比べようもない日」の釈義が異なる。
6節:さあ、男に子が産めるか、尋ねてみよ。なぜ、わたしは勇士がみな産婦のように腰に手を当てているのを見るのか。また、どの顔も青ざめているのを。
・勇士が「陣痛」の痛みに苦しんでいる。→5節の「恐怖」の状態の説明。
※陣痛の苦しみは「患難時代」を指す表現。
※勇士たちが顔が青ざめるほどの戦争下(不利な状況下)にあるとも考えられる。
7節:わざわいだ。実にその日は大いなる日、比べようもない日。それはヤコブには苦難の時。だが、彼はそこから救われる。
・陣痛→「大いなる日」、「比類なき日」→7年間の「患難時代」を指している。
※「患難時代」は全人類への苦しみとなるが、イスラエルにとっては大きな苦しみ。
患難時代の目的:
①罪の世を裁き、邪悪に終止符を打つ→イザヤ13:6~16、24:19~20
②イスラエルの民の悔い改めの為 →ゼカリヤ12:10~14、13:8~9
※特にイスラエルにとって厳しいもの→イザヤ40:1~2
イスラエルは、神との契約関係にあり、罪の為の裁きを受ける立場
裁きは異邦人の2倍
かつて苦しんだ反ユダヤ主義(十字軍、ホロコースト)をしのぐ迫害が襲う大患難時代。ゼカリヤ13:8~9によれば、終末の戦争でイスラエルのユダヤ人の3分の2が死ぬとされている。
しかし、最終的にイスラエルの民は救われることが示されている。
■4節から7節のまとめ
・史上、ユダヤの民の最も厳しい苦難が「大患難時代」。→ 「ヤコブの苦難の日」
・イスラエルは神の長子であり、祝福と呪いを2重で受ける立場にある。
☆2倍の祝福→「イスラエルは神の長子」・・出エジ 4:22–23、「長子の権利」・・申21:17
★2倍の呪い→ 「・・罪のために二倍を受けた」・・イザヤ40:2、「・・罪にしたがって、二倍の報復をする。」・・エレ16:18
☆契約下の祝福→申28:1~14
★契約下の呪い→申28:15~68・・・契約上、違反したときの裁きの厳しさを明記。
まめ知識:30~33章で、「見よ、その時代が来る」、「その日には」、「そのとき(時)」、「これらの日の後に、」という言葉は、患難時代に関して言及するときに用いられている。
8節:その日になると──万軍の主のことば──わたしはあなたの首のくびきを砕き、あなたのかせを解く。他国人が再び彼を奴隷にすることはない。
・この厳しい「患難時代」の時に、主が介入され、くびきが取り除かれる。
※大患難時代に主は、イスラエルの民を、「反キリスト」の迫害から解放する。
・これ以降、外国人がイスラエルの民を征服、支配することはない。(真の解放)
9節:彼らは彼らの神、主と、わたしが彼らのために立てる彼らの王ダビデに仕える。
・この解放に応じて、ユダヤ人たちは喜んで、主と、神が立てた「ダビデ」に仕える。
・「立てる」・・(ヘ)kum・・立ち上がる、「復活」の意味で使われる。ダビデの復活。
※ダビデ王・・DKNJからメシア的王国への移行期間75日において甦る。
※メシア王のもとでイスラエルを支配。エゼ34:23~24、37:24~25、ホセア3:5
※ダビデ契約 (4つの永遠の約束:王朝、王国、王座、子孫) の成就へ。
10節:わたしのしもべヤコブよ、恐れるな。──主のことば──イスラエルよ、おののくな。見よ。わたしが、あなたを遠くから、あなたの子孫を捕囚の地から救うからだ。ヤコブは帰って来て、平穏に安らかに生き、脅かす者はだれもいない。
・「恐れるな」→将来、深刻な状況になっても恐れず、約束の成就を待て!
※「ヤコブ」と呼ばれている→神のしもべと呼ばれ、イスラエルと同一視されている。
※最終的にイスラエルは生き残る。→敵はいなくなる。神がそのように導かれる。
※離散しているすべての国、捕囚の全地から救われ、約束の地に戻り、平安に暮らす。
11節:わたしがあなたとともにいて、──主のことば──あなたを救うからだ。わたしが、あなたを追いやった先のすべての国々を滅ぼし尽くすからだ。しかし、あなたを滅ぼし尽くすことはない。ただし、さばきによってあなたを懲らしめる。決してあなたを罰せずにおくことはない。」
・主が共にいてイスラエルの民を救ってくださる約束が示されている。
※裁きはイスラエルの迫害国を滅ぼすが、イスラエルは滅ぼさない。
※①イエスのメシア性を拒否、②モーセの律法下での罪、この二つの裁きがある。
生存は保証されているが、神との契約により、イスラエルの民は異邦人の2倍の罰を受けることになる。この裁きは並大抵の苦しさではないと想像される。
『特権の人生』
・神はイスラエルの民の裁きを、大患難時代という形で用意しておられます。その裁きは相当に悲惨なものと思われ、民族が消えるのではないかと思われるほど厳しいものと想像します。
・注目すべきは、異邦人の裁きよりも厳しいものになるということです。神との契約があるからだと言いますが、偉大なる神との契約を交わせることがとんでもない特権であるのに、それが逆に厳しさへと変わってしまうとは。
・私たちは、患難時代を通らずに千年王国に行ける特権を与えられました。つまり、永遠のいのちを目指す人生において、神の裁きを受けることなく、神の子とされているということです。
・この特権は失われることがないと神は保証されます。その保証に信頼して、私たちは信仰を貫き、信仰を増し加えて、益々神の子にふさわしく新たに得た永遠の人生を歩むのです。ハレルヤ!
「まことに、まことに、あなた方に言います。わたしのことばを聞いて、わたしをつかわされた方を信じる者は、永遠のいのちを持ち、さばきにあうことがなく、死からいのちに移っています。」ヨハネ 5:24