エレミヤ書29章1節~14節

時代背景

<バビロン反逆の要因> 
歴史的視点から見る外的要因①

・バビロニア年代記・・BC595~4年にバビロンの内部トラブルが発生、捕囚のユダヤ人の一部が関与した。ネブカドネツァル王がユダヤ人2名を処刑している(エレ29:21~22)
※トラブルの原因は、エルサレムとバビロンの偽預言者たちが語るバビロン崩壊の預言。
・歴史展開
BC605年:カルケミシュの戦いでバビロンが勝利し、国際秩序を掌握。
BC597年:エホヤキン王と共に第2次捕囚(職人・兵士など上層部がバビロンへ)。
BC597年:ゼデキヤ(エホヤキンの叔父)がバビロンの傀儡王として即位。
BC594年頃:周辺諸国(エドム、モアブ、アンモン、ツロ、シドン)がエルサレムに使者を送り、反バビロン同盟を画策(エレミヤ27、28章の舞台)。
この時期、バビロンは東征に向かい、更に帝国内では政変やその周辺属国に不満あり。その動きを「神が味方する兆候」と誤解した可能性あり。


歴史的視点から見る外的要因②

BC594/593年頃:ネブカドネツァル王はバビロンでの反乱(エラムなど諸地域の不安定)に対処しており、ユダや周辺諸国は「今が好機」と考えた。エレミヤ27〜29章の背景。

BC593年:ネブカドネツァルは諸属国をバビロンに召集し、忠誠を再確認。ゼデキヤもバビロンに出向いたと考えられる。(エレ51:59・・ゼデキヤ王の第4年)→ 反乱は未遂に終わる。
BC589年頃:ゼデキヤはエジプトに支援を期待し、反乱を決行。(列Ⅱ24:20、エゼ17:15~16)
BC588〜586年:ネブカドネツァルがエルサレムを包囲。BC586年の神殿破壊、捕囚へ。(エゼ17:17~)


当時の情勢からみる内的要因
・バビロンの東征の展開に遅れが発生し、西が手薄となり、バビロン内部のトラブルもあり、偽預言者や上層部たちは、バビロン崩壊すなわちイスラエルの回復が近いと誤解した。※神は、ネブカドネツァル王がしもべであり、地上の権限を委ねたと宣言していた。
・「主の宮がある限り安全だ」という思い込み(エレ7:4)※民は「神殿がある限り、神が国を守ってくださる」から、エルサレムの陥落を信じない。→ この思考が「バビロンを打ち破って自由を得られる」という幻想に発展。
・偽預言者の宣言(エレ28:3-4)※「2年のうちに主はバビロンのくびきを砕き、捕囚民や器をエルサレムに戻す」→ 2年以内の「勝利宣言」は、民に自由を勝ち取る確信を与えた。
大事なことは、神に従うか、人間の希望的観測に従うか。もちろん、神です!

1節:預言者エレミヤは、ネブカドネツァルがエルサレムからバビロンへ引いて行った捕囚の民、すなわち、長老で生き残っている者たち、祭司たち、預言者たち、および民全体に、エルサレムから次のような手紙を送った。

・第2回捕囚(大規模)の後・・2節のエコンヤの記述で確定。
・手紙の送付・・宛先は上層部でない捕囚された人々。※長老たち、祭司たち、預言者たち、そして民全体。預言者の中には、第1次捕囚ではダニエル第2次捕囚ではエゼキエルがいた。そして多くの偽預言者たちも。

2節:この手紙は、エコンヤ王、王母、宦官たち、ユダとエルサレムの首長たち、職人、鍛冶がエルサレムを去った後、
3節:ユダの王ゼデキヤが、バビロンの王ネブカドネツァルのもと、バビロンへ遣わした、シャファンの子エルアサとヒルキヤの子ゲマルヤの手に託したもので、そのことばは次のとおりである。

・BC597年のバビロン捕囚の後ということは明白。
・ゼデキヤ王に派遣された2名の人物。
①シャファンの子エルアサ・・エレミヤを信頼する者(26章参照)。

②ヒルキヤの子ゲマルヤ・・ヒルキヤはヨシヤ王時代の大祭司。Ⅱ列22:4など。
※派遣理由・・27章にあった周辺国の大使の集結がネブカドネツァルの耳に入り、それを陰謀と疑われ、その火消しのために二人が派遣された。(詳細は不明)  
・この派遣を利用して、エレミヤは手紙を捕囚地の民に届けることができた。

  
4節:「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。『エルサレムからバビロンへわたしが引いて行かせたすべての捕囚の民に。

・捕囚されて行った(神が行かせた)民への神のことば。→神の民への愛が感じられる。
※決して見捨ててはいない!                 

5節:家を建てて住み、果樹園を造って、その実を食べよ。
6節:妻を迎えて、息子、娘を生み、あなたがたの息子には妻を迎え、娘を嫁がせて、息子、娘を産ませ、そこで増えよ。減ってはならない。
7節:わたしがあなたがたを引いて行かせた、その町の平安を求め、その町のために主に祈れ。その町の平安によって、あなたがたは平安を得ることになるのだから。』

・バビロンに定住するために取るべき4つの行動。
①家を建てる。
②果樹園を運営する→仕事をする、生計をきちんと立てることを意味する。
③結婚、子孫繁栄→イスラエル民族の増加。
④捕囚された町の平安を祈る。福祉的行動→公正な思い、平和の構築。
※こうした生活様式は、AD70年以降の離散の民の基盤となり、現在に至る

<フルクテンバーム博士>

こうした生活基盤に立つユダヤ人に対しての反ユダヤ主義について:
反ユダヤ主義は、ホスト国が混乱期(財政難など)になると激化する→(例)ナチスドイツ
ホスト国が安定していれば反ユダヤ主義は沈静→(例)アメリカ
※アメリカも混乱すれば反ユダヤ主義となるだろう。→ それが離散の民の状態。

8節:まことに、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。『あなたがたのうちにいる預言者たちや、占い師たちにごまかされるな。また、あなたがたが見ている夢に聞き従ってはならない。
9節:なぜなら、彼らはわたしの名を使って、偽りをあなたがたに預言しているからだ。わたしは彼らを遣わしていない──主のことば。』

・捕囚先にも存在する偽預言者や占い師など。
・それらのことばに聞き従って変な夢を描いてはいけない、という警告。
※それらは神からのものではなく、自分たちの産物である。
・神はそのような預言者は遣わしていない。

    
10節:まことに、主はこう言われる。『バビロンに七十年が満ちるころ、わたしはあなたがたを顧み、あなたがたにいつくしみの約束を果たして、あなたがたをこの場所に帰らせる。

・改めて神の預言を示す。→バビロン捕囚の期間は70年間!(これは2度目の告知)
・70年の後に、神は民に慈しみの約束を果たす。→故郷に帰還させる。
※これは近未来預言。エルサレム帰還と神殿再建の命令が発布される。

11節:わたし自身、あなたがたのために立てている計画をよく知っている──主のことば──。それはわざわいではなく平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ。

・ここから14節まで、最終的な回復の預言(遠未来預言)になる。
※「将来」(ヘ)acharit⇒後半、終わり、未来の予言・・遠未来預言。ユダヤ人の最終的回復に関する未来預言は、エレ30章~33章で語られる。
acharitの意味を誤解したのがダニエル→近未来と遠未来の区別の難しさ
①メシア的王国は捕囚の後に確立される。ダニエル 9:1~2
②王国設立の条件はイスラエル全体の罪の告白。ダニエル 9:3~19
③天使ガブリエルにより70週の預言が示される。ダニエル 9:20~27

12節:あなたがたがわたしに呼びかけ、来て、わたしに祈るなら、わたしはあなたがたに耳を傾ける。
13節:あなたがたがわたしを捜し求めるとき、心を尽くしてわたしを求めるなら、わたしを見つける。

・遠未来のイスラエル国家再生について示される。
・イスラエルが、心から神に呼びかけ祈るという時が来る。神は、彼らに耳を傾ける。
※それまでは民の声は神に届かない状態。→神と正対していなかったから。
※イスラエルの呼びかけは、心からの「求め」、悔い改めによる回帰。
※この心からの回帰の時、最終的な回復・再生が神によって成就する。
※ダニエルもそのために一心に悔い改めの祈りをした。時期は誤解したが・・・。
・DKNJの時、イスラエルは神を求め、心から悔い改める。
神は聖霊を与えられて、イスラエルの民は救いへと導かれ、DKNJは終焉へと向かう。

14節:わたしはあなたがたに見出される──主のことば──。わたしは、あなたがたを元どおりにする。あなたがたを追い散らした先のあらゆる国々とあらゆる場所から、あなたがたを集める──主のことば──。わたしはあなたがたを、引いて行った先から元の場所へ帰らせる。』

・「わたしはあなたがたに見出される」・・その時、民は正しく神に向き合う。
※イエス様を受け入れる時が来る。
・神は回復を実現する。世界規模の離散からの集結。→裁きの赦しを意味する。
※「土地の契約」の成就を意味する・・申命記30:1~5

<土地の契約>●アブラハム契約の土地に関する条項の発展形。申29:1~30:20。
・シナイ契約とは別物で、無条件契約である。
・「約束された土地で祝福を受けて住むためには、~」という内容。従順が条件となる。
・モーセ五書にありながら、捕囚となることが既に明示されているのは興味深い。(申30:1~4)
・神に従順になれば、約束の地に戻され、祝福を受けてその地に住むことになる。

未来の希望が提示されたが、イスラエルの民は自分達の考えで行動し、神に反逆する。
終末時代も、神は偽預言者が問題であることを示されていることに注目しよう!

 

『信仰の深まり』
・モーセが神から、いわゆる「モーセの律法」を受け取ったばかりの頃に、神はイスラエルの民の離散を見ていたということは、彼らが将来この律法を守らず神に反することを知っておられたということ。
・しかし、最後にはイスラエルの民が心から悔い改めて神に立ち返る時が来ることを示されている。過去に聖書に書かれていることが、確実に成就して現在もその歴史が展開している。
・人は、大患難時代の未来が示されてもそれを無視し、イスラエルの民のごとく破滅へと突き進んでいる。主に信頼して正しい知恵を得た真の信仰者は、決してそのような末路には至らない。
・主は真実という言葉に値する完全なお方であり、信頼に値する唯一の愛の神。今日もこうして神の凄さ、すばらしさを知って信仰を深め、神の道を皆とともに歩めることに感謝!
「不信仰になって神の約束を疑うようなことはなく、かえって信仰が強められて、神に栄光を帰し、神には約束したことを実行する力がある、と確信していました。だからこそ、「彼には、それが義と認められた」のです。ローマ 4:20~22

2025年10月09日