エレミヤ書28章1節~17節
ハナンヤという偽預言者が、エレミヤの「捕囚期間70年」という預言に対抗するようなことばを、神の御名によって語ります。さてその末路は?
1節:その同じ年、ユダの王ゼデキヤの治世の初め、第四年の第五の月に、ギブオン出身の預言者、アズルの子ハナンヤが、主の宮で、祭司たちと民全体の前で、私に語って言った。
・ゼデキヤ王の第4年目の第5の月に起こった。
・ハナンヤ(Hananiah)
※ギブオン出身・・エルサレム北西8~9km。
※祭司の町。アナトテ(エレミヤの出身地)と同じ。

・ハナンヤは、神殿で祭司と民の面前で エレミヤに向かってメッセージを語った。
2節:「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは、バビロンの王のくびきを砕く。
3節:二年のうちに、わたしは、バビロンの王ネブカドネツァルがこの場所から奪い取ってバビロンに運んだ主の宮のすべての器をこの場所に戻す。
4節:バビロンに行ったユダの王、エホヤキムの子エコンヤと、ユダのすべての捕囚の民も、わたしはこの場所に帰らせる──主のことば──。わたしがバビロンの王のくびきを砕くからだ。」
・ハナンヤの偽預言→くびきの破壊
①神は、諸国に負わせているバビロンのくびきを破壊する。
②神は2年以内に、奪われた宮の器も元の場所に戻される。
③捕囚されたエホヤキン王とすべての民も、2年以内に元の場所に帰らせる。
※注目すべきは、エレミヤの首にくびきがあること。→10節参照
※27章でエレミヤが指摘した偽預言者の一人(代表格)が、このハナンヤ。
※彼の預言は、2年以内にバビロン捕囚は終わり、すべてが回復するというもの。
エレミヤの預言と完全に異なる内容を展開する。
5節:そこで預言者エレミヤは、主の宮に立っている祭司たちや民全体の前で、預言者ハナンヤに言った。
6節:預言者エレミヤは言った。「アーメン。そのとおりに主がしてくださるように。あなたが預言したことばを主が成就させ、主の宮の器と、すべての捕囚の民をバビロンからこの場所に戻してくださるように。
・祭司、民の面前で、エレミヤはハナンヤに言葉を返す。
・エレミヤの実直な性格が示される。
・ハナンヤの語る内容が実現してほしいと、皮肉ではなく、率直に思うエレミヤ。
※願わくは、ハナンヤの言うようになってほしいのだが、神のご意思は全く違うのだ!
7節:しかし、私があなたの耳と、すべての民の耳に語ろうとするこのことばを聞きなさい。
8節:昔から、私と、あなたの先に出た預言者たちは、多くの地域と大きな王国について、戦いとわざわいと疫病を預言した。
・しかし、神の御心は違うから、次の内容をよく聞いてほしい!
・過去の預言者たちは、諸国、大国に対して戦い、わざわい、疫病の預言をしてきた。
・平和になるという預言はなかったという事実。
※そういう意味で、ハナンヤの預言は異質なもの。
9節:平安を預言する預言者については、その預言者のことばが成就して初めて、本当に主が遣わされた預言者だ、と知られるのだ。」
10節:しかし預言者ハナンヤは、預言者エレミヤの首から例のかせを取り、それを砕いた。
11節:そしてハナンヤは、民全体の前でこう言った。「主はこう言われる。このとおり、わたしは二年のうちに、バビロンの王ネブカドネツァルのくびきを、すべての国々の首から砕く。」そこで、預言者エレミヤは立ち去った。
・平和を預言するなら、その預言が成就して、その預言者が本物とされる。
※申18:21~22参照
・この時点で、両者の真偽は判別不可。→2年の経過が必要。
・エレミヤがそう言うと、ハナンヤはエレミヤのくびきを破壊した。
※バビロンの束縛・・捕囚、奴隷制・・からの解放を意味している。
・神は2年以内に、すべての諸国のくびきを砕かれると、ハナンヤは宣言した。
・これを聞いて、エレミヤはその場を立ち去った。→2年のうちに、真偽が証明される。
12節:預言者ハナンヤが預言者エレミヤの首からかせを取って砕いた後、エレミヤに次のような主のことばがあった。
13節:「行って、ハナンヤに次のように言え。『主はこう言われる。あなたは木のかせを砕いたが、その代わりに、鉄のかせを作ることになる。
・場を離れたエレミヤに、神のハナンヤに対する預言が示され、それを告げる。
・ハナンヤはエレミヤの木製のくびきを破壊したが、その結果、鉄製のくびきが作られ、民はそれを負うことになる。
※ハナンヤのことばに騙されて、さらに頑なになる民。バビロンへの反抗の助長。
14節:まことに、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは鉄のくびきをこれらすべての国の首にはめて、バビロンの王ネブカドネツァルに仕えさせる。彼らは彼に仕える。野の生き物まで、わたしは彼に与えた。』」
・27章の通り、神はネブカドネツァル王に人間界、動物界の権限を委譲した。
※鉄のくびきは、さらに厳しい支配となることを意味する。(神の裁きである)
※ハナンヤの預言とは正反対の内容。
15節:そこで預言者エレミヤは、預言者ハナンヤに言った。「ハナンヤ、聞きなさい。主はあなたを遣わされていない。あなたはこの民を偽りに拠り頼ませた。
16節:それゆえ、主はこう言われる。見よ、わたしはあなたを地の面から追い出す。今年、あなたは死ぬ。主への反逆をそそのかしたからだ。」
・エレミヤは、ハナンヤに神の預言を告げる。
・神はハナンヤを遣わしてはいない。(諭すように告げるエレミヤ)
・ハナンヤは人々を惑わし、嘘に信頼を置くように導いた。
・偽預言の罪により、ハナンヤは地上から追い出される。
・ハナンヤの死は、預言が発せられたこの年のうちに起こる。→申命記18:20参照。
17節:預言者ハナンヤは、その年の第七の月に死んだ。
・ハナンヤの死→同年第7の月・・ハナンヤが預言した第5の月の2か月後。
※エレミヤの預言、エレミヤが真の預言者であること、いずれも真実性が証明された。
しかし、イスラエル全体は偽預言に翻弄されて⇒神殿崩壊へ!
『エレミヤ的思考力』
・エレミヤは、ハナンヤが語る預言について、素直にその通りになってほしいと言った。それは彼の本音と同じであったと分かる。しかしエレミヤは、神の声をしっかりと聴いていた。
・ハナンヤは、自分が正しいと判断し、神の御心と同じと判断して語ったが、エレミヤは冷静に、自分の思いと神の御心との違いを把握していた。(自分の願望と神の御心の区別)
・「私のすること、言うことは、神と同じ!だから私は正しい。」そんな風に思ってはならない。私たちは、義となるためではなく、神の愛を実践することを期待されていることを覚えよう。
・神との対話の時間を持つことは、神の教えを聞き取り、霊的成長が図られる大切な時間である。その時間を通して、ハナンヤではなくエレミヤ的思考力が養えるよう、熱心に取り組みましょう。
「この世と調子を合わせてはいけません。むしろ、心を新たにすることで、自分を変えていただきなさい。そうすれば、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神に喜ばれ、完全であるのかを見分けるようになります。」ローマ 12:2