ダニエル書11章10節~20節

 

 

10節:しかし、その息子たちは戦いを仕掛け、おびただしい数の強力な大軍を集める。進みに進んで押し流すように越えて行き、そうしてまた敵の砦に戦いを仕掛ける。
11節:南の王は大いに怒って戦いに出て来て、彼と、すなわち北の王と戦う。北の王はおびただしい大軍を起こすが、その大軍は敵の手に渡される。

 

その息子たち→セレウコスⅢ(弟)とアンティオコスⅢ(兄)
特にアンティオコスⅢは多くの軍事力を集め、巨大な軍隊となった。
この軍隊がエジプトに勝ち進み、多くの土地を獲得。
ラフィアの戦い(BC217)→アンティオコスⅢ(北)とプトレマイオスⅣ(南)の戦い。
北68000人×南75000人。結果的にはエジプト(南)の方が上回っていた。

プトレマイオスⅣは妹と結婚していた。彼女はラフィアの戦いに同行し、自軍にインスピレーションを与えて勝利したとの逸話がある。
プトレマイオスⅣの治世の間は、北との国境は守られていた。

12節:その大軍を打ち破ると南の王の心は高ぶり、数万人を倒す。しかし、勝利を得ることはない。
13節:北の王が再び、以前より大きな、おびただしい大軍を起こして、何年かの後、大軍勢と多くの武器をもって攻めて来るからである。

 

12節
プトレマイオスⅣは勝利で高慢になり、和平は一時的なものとなり、プトレマイオスは北を攻める。
しかしプトレマイオスⅣの性格が怠惰で、贅沢であったことから、北の王を追い詰めることをせず、贅沢な生活をして自国民を怒らせ、後に妹と共に、同時に亡くなる。
13節(~19節まではプトレマイオスⅤとアンティオコスⅢの抗争)
北の王アンティオコスⅢはインドやカスピ海に勢力を拡大。
これにより、多くの軍事力を得て、更に経済力も向上した。
こうして、エジプトに攻め入る。

14節:そのころ、多くの者が南の王に反抗して立ち上がり、あなたの民の暴徒たちも、高ぶって幻を実現させようとするが、失敗する。
15節:しかし、北の王が来て塁を築き、城壁のある町を攻め取ると、南の軍勢は立ち向かうことができず、精兵たちでさえ立ち向かう力がない。

 

14節
プトレマイオスⅤは王位に就いたとき(BC204)、彼は子供で、摂政をめぐる争いが起こり王国は不安定。無政府状態
その期に乗じて、アンティオコスⅢはエジプトに侵攻。小アジアのプトレマイオス領を奪う。諸国も加わる。
この時アンティオコスⅢに加担した戦う「あなたの民」、すなわちユダヤ人も参加するが、失敗する。
ユダヤ人はイスラエルの自由を目的とし、エルサレム駐在のエジプト守備隊を攻撃。
しかし、勝利の効果は長続きしなかった。→失敗。
15節
「城壁のある町」・・シドン(聖書地図4,5参照)。パニウムの戦いは、シドン(港町)の戦い。
アンティオコスⅢはエジプトを攻めるが、エジプトは応戦できず、BC200年のパニウムの戦いで、アンティオコスⅢは壊滅的打撃を与え、イスラエルの土地はエジプトからシリアの支配に移行した。

16節:そのようにして、これを攻めて来る者は思いのままにふるまう。彼に立ち向かう者はいない。彼は麗しい国にとどまり、自分の手で滅ぼし尽くそうとする。
17節:彼は自分の国の総力を挙げて攻め入ろうと決意し、まず相手と和睦して娘の一人を与え、その国を滅ぼそうとする。しかしそれは成功せず、彼の思いどおりにはならない。

 

16節
アンティオコスⅢはエジプトを自分の思うままに攻撃した。
彼はイスラエルの支配を獲得した。よってイスラエルはアンティオコスⅢの支配下になる。
彼のイスラエル支配は、最初の3年間は課税を減らしたり神殿のために多額の金額を与えたりと良かった。
彼は、エジプトを滅ぼし尽くそうと企んでいた。
17節
アンティオコスⅢの拡張主義は、ローマとの対立を意味する。ローマの顔色を伺いつつ行動することになる。
アンティオコスⅢはエジプトとの和平のため、アンティオコスの娘クレオパトラ1世を嫁がせる。(BC193)あのクレオパトラは7世。プトレマイオス最後の女王。
アンティオコスⅢはクレオパトラ1世を通してエジプトの支配を目論んだが、彼女は夫(プトレマイオスV)の死後、息子の摂政としてエジプトを支配し、平和を維持した。アンティオコスの目論見は失敗に終わった。

18節:それで彼は島々に顔を向け、その多くを攻め取る。しかし、ある指揮官が彼に侮辱をやめさせるばかりか、かえってその侮辱を彼の上に返す。

 

「島々に顔を向け...」・・小アジア、ギリシアなどのローマ支配権力を破壊しようと軍事活動を展開する。
時期的には、クレオパトラ1世の政略結婚のすぐあとの頃。
BC191年、アンティオコスⅢはテルモピュライ(アテネ北部)で敗れ、さらにBC190年、リディアの都市マグネシア・アド・シピルムの戦いで敗れ、セレウコスの小アジア支配は終わる。
「ある指揮官」・・ローマ領事ルキウス・コルネリウス・アジアティクスという軍事的、政治的指揮官。
アンティオコスのローマに対する態度は傲慢で休戦交渉の大使を拒否し、ローマを怒らせていた。結局、BC188年、屈辱的なアパメヤ条約を受け入れることとなってしまった。

アパメヤ条約とは

・小アジアの支配の放棄
・多額の賠償金(15000タラント)
・家族、身内の人質
・毎年1000タラント(6万ポンド)の賠償

19節:彼は自分の国の砦に引き返すが、つまずき、倒れていなくなる。
20節:彼に代わって、一人の人が起こる。彼は国の栄光のために、税を取り立てる者を行き巡らすが、数日のうちに、怒りにも戦いにもよらずに滅ぼされる。

 

19節
敗北して自国に帰るアンティオコスⅢは、敗戦による多額な賠償金、軍力の制限(象や艦隊)、息子などの人質提供を余儀なくされた。12年間にわたり、高額(405tの貴金属)の賠償金を支払う。
彼はBC187/6年に、スサ近くの寺院で暗殺された。
20節
「彼は国の栄光のために」・・は、「王室のすばらしさを維持するために」とも訳せる。→自分たちは苦しまず。
アンティオコスⅢの次の王、セレウコスⅣフィロパトル。父の敗北で、ローマに多額の貴金属の賠償負担。
「税を取り立てる者」・・ヘリオドラス。宮廷の主要官僚の実力者。イスラエルの神殿からの取り立てに期待された。
「数日のうちに、」・・この王は、在位期間が11~12年で、父(37年間)の3分の1の期間であるために、こう表現されている。
王はヘリオドラスに毒殺され、摂政となったヘリオドラスも殺されてその治世は短命だった。

 

神の期待に応える人生

「勝てば官軍」ということわざがある。勝った側が正しい存在で、負けた方は間違った存在となる、という意味。
勝者は歴史を自分の都合に合わせて作り上げて行く。まさに自己中そのもの。
実際に調査を進めれば、その内容が全く事実と異なるという事が多々あることに驚かされる。
我々は歴史を見るとき、歴史の流れの根底に神の存在を意識する必要があると考える。
ダニエル書によって、すでに神は未来の筋書きを決めておられ、その歴史の展開は天使、堕天使の働きによると知った。
更に、世界の展開の中心は、イスラエルである事も理解した。
こうして人類の救いの道を展開しておられる神の御心を知り、且つ救われた者としての役割を十分に理解して、神に喜ばれる人生の歩みを皆さんと共に、スクラム組んで歩んで行きたいです。

2024年08月16日