ダニエル書11章2節~9節

2節:「今、私はあなたに真理を告げる。見よ。なお三人の王がペルシアに起こり、第四の者は、ほかのだれよりも、はるかに富む者となる。この者がその富によって強力になったとき、全世界を、とりわけギリシアの国を奮い立たせる。

ペルシア

 

第4番目の王。この王は、歴代で最も富む王となる。→クセルクセス王
エステル1:1・・インドからエチオピアに至る127州の広域を統治。エステルはこの王の妃となる。
エステル1:4・・「王は彼の王国の栄光の富と大いなる栄誉を幾日も示して、百八十日に及んだ。」
BC480年、クセルクセス王はギリシア侵略するもサラミスの海戦で敗退し、侵略を断念。
BC465年、クセルクセス王は暗殺される。それはペルシア衰退の始まりを意味する。


3節:一人の勇敢な王が起こり、大きな権力をもって治め、思いのままにふるまう。
4節:しかし彼が起こったとき、その国は崩壊し、天の四方に向けて分割される。その国は彼の子孫のものにはならず、また、彼が支配したほどの権力もなくなる。彼の国は根こそぎにされ、その子孫以外の者のものとなる。

ギリシア

 

一人の勇敢な王。ギリシアのアレキサンダー大王(アレキサンドロス大王)⇒マケドニアの王フィリポスの息子。アリストテレスが家庭教師。20歳で王位に就く(BC336年)
この個所は軍事的侵略の成功と広域的支配の完成を示している。
彼が18歳の時、「カイロネイアの戦い」(BC338)で、マケドニアのギリシアにおける覇権を確立。
「ガウガメラの戦い」(BC331)でペルシア軍を打ち、バビロンを征し、勝利。ペルシア帝国は終焉した。

アレキサンダー大王の広域支配の結果、ギリシア語、文化、道路が広がり、キリスト教世界宣教の基盤となる。
彼の死後(32歳)帝国は4人の将軍にて分割。彼の子孫は暗殺されてしまう。
4人の将軍の権力争いは、帝国の権威を根底から失墜させてしまう。

 

南(エジプト)と北(シリア)の王の抗争 5節~ 

 


5節:南の王が強くなる。しかし、彼よりもその軍の長の一人が強くなり、彼の権力よりも大きな権力をもって治める。

南の王→プトレマイオス1世ソテル(BC323~BC282)
南の王(アレキサンダー大王の将軍の一人)よりも更に強くなった将軍(アレキサンダー大王の将軍の一人)が北の王セレウコス1世。

6節:何年かたって、彼らは同盟を結ぶ。和睦をするために南の王の娘が北の王に嫁ぐが、彼女の勢力は保たれず、彼の勢力も続かない。彼女は、自分を連れて来た者、自分を生んだ者、そのころ自分を力づけた者とともに引き渡される。

南の王プトレマイオスⅡは、一人娘ベロニケを北の王アンティオコスⅡに嫁がせ、同盟関係となる。
その時北の王は最初の妻ラオディケを離縁。しかし、南の王の死で同盟関係は崩壊し、ベロニケは離婚される。
北の王はラオディケと復縁するが、ラオディケは夫(北の王)を殺し息子を王とし、更にベロニケとその息子、側近らを殺害。

7節:しかし、彼女の根から一つの芽が父に代わって起こる。そして北の王の軍に立ち向かい、その砦に攻め入り、これと戦って勝つ。
8節:なお、彼は彼らの神々を、彼らが鋳た像や、銀と金の尊い器とともにエジプトに捕らえ移す。彼は何年かの間、北の王と関わりを持たない。
9節:しかし、北の王は南の王の国に侵入し、そして自分の地に帰る。

「彼女の根」→ベロニケの家系、すなわち彼女の兄弟を指す。
プトレマイオスⅢはベロニケ救出のために出陣したが、ベロニケは殺され、その目的は復讐に変った。
プトレマイオスⅢはラオディケを殺し、彼女の息子の軍を撃破し、多大な地域を占領。
更に、プトレマイオスⅢは、多大な戦利品をエジプトに持ち帰った。
その後、北の王セレウコスⅡはエジプトを攻めるが敗北し、結局自分の土地に帰ることになる。

 

ラオディケに見る復讐の連鎖

同盟関係構築のため、ベロニケは北の王に嫁ぎ、正妻だったラオディケは離縁された。
同盟関係が崩壊すると、ベロニケは離縁されラオディケが復縁したが、彼女は夫を殺害し息子を即位させる。
南の新王プトレマイオスⅢは、ベロニケの兄弟で、彼女の救済に間に合わず、復讐に変わり、ラオディケを殺し、領地を占領し、宝まで奪っていった。
一般的に復讐は悪いことではないと思いがちだが、復讐は神の主権。人がかかわることではない!
歴史はこうしたネガティヴな思いが主体となって展開するときがある。一部の人の感情が歴史を動かす。
こうした感情をサタン、堕天使は上手に用いて、世界を神から遠ざける。だからこそ、神を見上げよう!
神が人に求められているのは、正しさの認識と実践であって、正しさによって裁くことではありません。
愛する者たち、自分で復讐してはいけません、神の怒りにゆだねなさい。こう書かれているからです。「復讐はわたしのもの。わたしが報復する。」 主はそう言われます。ロマ12:19

 

歴史を導く神

真理の書に書かれている歴史の展開。堕天使が動き、天使が関わっている。
堕天使が主体的に動いて、要所要所で神の命令により天使が活動するという事だろうか?!
このからくりは、いずれ私たちもずっと先に知ることになるのだろうが、神の存在がとてつもなく大きく感じられる。
ダニエル書の歴史展開の説明の正確性に、これは後で書かれたのではないかとの説もあるらしい。
そのような疑いは、神の絶大なる存在を示す証拠と言えるのではないか!
御子を信じ、神を信じる信仰心は、ダニエルの命がけの預言を信じることに、何の抵抗も疑いもない。
改めて、神の絶大なる存在に、驚きと、恐れと、感謝が溢れ、その栄光をたたえる日を待ち望む

 

2024年08月09日