ダニエル書6章1節~28節

1節:ダレイオスは、全国に任地を持つ百二十人の太守を任命して国を治めさせるのがよいと思った。
2節:彼はまた、彼らの上にダニエルを含む三人の大臣を置いた。これは、太守たちがこの三人に報告を行い、王が損害を被らないようにするためであった。

ダレイオス・・キュロス王の叔父。キュロスとの関係は良かったと想像する。
キュロスは無血開城のような形でバビロンを討取ったと碑文に記され、ダレイオスはキュロスの指揮下にあり、彼が総指揮のもとにバビロンを攻め落としたとも記されている。
ダレイオスがバビロン州の統治をキュロスから任された。
ダレイオスは、王に負担が掛からず、また失敗が起きない政治をすることを旨とした。
バビロン帝国で活躍した人物や体制、方法を利用しようとする考え。


キュロス王の姻戚関係:キュロス王の母親はメディア家の娘。ダレイオスは母の兄弟。キュロスは両国に関係あり。国の大きさは、この時点でメディアの方が大きい。

3節:さて、このダニエルは、ほかの大臣や太守よりも際立って秀でていた。彼のうちにすぐれた霊が宿っていたからであった。そこで王は、彼を任命して全国を治めさせようと思った。
4節:大臣や太守たちは、国政についてダニエルを訴える口実を見つけようとしたが、何の口実も欠点も見つけられなかった。彼は忠実で、何の怠慢も欠点も見つからなかったのである。
5節:そこでこの人たちは言った。「われわれはこのダニエルを訴えるための、いかなる口実も見つけられない。彼の神の律法のことで見つけるしかない。」

ダニエルは、神の導きにより、やましい所がなく、優秀さにおいて突出していた。信頼に足る人物。
ダレイオスはダニエルを首相に任命しようと考えていた。当時も、賄賂、汚職の存在は想像に難くない。
やっかんだのは、大臣の二人とそのグループの太守たち。ダニエルは、一旦は現役を退いていた。

ダニエルの存在:ダニエルの年齢は80歳代。正しい者がいると、悪事をしようとしてもできない。同じ立場にいたので、彼らの悪巧みもよく知っている。彼の出世は迷惑!
ダニエルを貶める口実、欠点はない。彼の神の律法を利用して貶めるしかない!
反ユダヤ主義は神に反する行為!
人は、知らず知らず行っている神への背信行為に気付かない。

6節:それでこの大臣と太守たちは、王のもとに押しかけて来て、こう言った。「ダレイオス王よ、永遠に生きられますように。
7節:王よ。国中の大臣、長官、太守、顧問、総督はみな、王が一つの法令を制定し、断固たる禁令を出していただくことに同意しました。すなわち今から三十日間、王よ、いかなる神にでも人にでも、あなた以外に祈願をする者は、だれでも獅子の穴に投げ込まれる、と
8節:王よ、今、その禁令を制定し、変更されることのないようにその文書に署名し、取り消しのできないメディアとペルシアの法律としてください。」
9節:そこで、ダレイオス王はその禁令の文書に署名した。

ダニエルの律法を利用した陰謀。→神以外を拝まないユダヤ人の律法を利用した陰謀。
それは、今から30日間、王以外に祈願する者は誰でも獅子の穴に投げ込まれるという禁令。
さらに、この禁令をメディア・ペルシアの法律として発布する。(王でも取り消しできない法律)
国中の大臣や太守などのトップが全員、王が禁令を出してほしいことに同意した。⇒明らかに嘘がある。大臣であるダニエルはこの法に賛成していない。
ダレイオスは、何の疑いもなくこの禁令を発布してしまう。(エステル記にも共通する陰謀あり)
獅子の穴:バビロンは燃える火の炉に投げ込むという刑罰。ペルシアでは、火が偶像の一つであり、火ではなく獅子による刑が用いられた。
メディア・ペルシアの法律:王でも変更できない法。一度発布された法は、王でも取り消し、変更不可。法に対する王の責任と継続性があった。王でも逆らえない法の存在。

エステル記、エズラ記(5章~6章)にも見られた。

10節:ダニエルは、その文書に署名されたことを知って自分の家に帰った。その屋上の部屋はエルサレムの方角に窓が開いていた。彼は以前からしていたように、日に三度ひざまずき、自分の神の前に祈って感謝をささげていた。
11節:すると、この者たちが押しかけて来て、ダニエルが神に祈り求め、哀願しているのを見つけた。
12節:そこで彼らは王の前に進み出て、王の禁令について言った。「王よ。王は今から三十日間、いかなる神にでも人にでも、あなた以外に祈願をする者は、だれでも獅子の穴に投げ込まれるという禁令に、署名されたのではありませんか。」王は答えた。「取り消しのできないメディアとペルシアの法律がそうであるように、そのことは確かである。」
13節:そこで、彼らは王に告げた。「王よ。ユダからの捕虜の一人ダニエルは、あなたと、ご署名になった禁令を無視して、日に三度、自分勝手な祈願をしております。」
14節:このことを聞いて王は非常に憂い、ダニエルを救おうと気遣った。そして彼を助け出そうと、日没まで手を尽くした。
15節:そのとき、あの者たちが王のもとに押しかけて来て、王に言った。「王よ。王が制定したいかなる禁令や法令も、決して変更されることはないということが、メディアとペルシアの法律であることをご承知ください。」
16節:それで王は命令を出し、ダニエルは連れて来られて、獅子の穴に投げ込まれた。王はダニエルに話しかけて言った。「おまえがいつも仕えている神が、おまえをお救いになるように。」

ダニエルは、その法令が自分の抹殺を意図したものと知っていた。にもかかわらず、日に3度の祈りをした。
『宮に向かって』→ソロモンの祈り→Ⅰ列王記8:46~50、Ⅱ歴代誌6:36~39。
告発者たちはダニエルの王以外への祈りを確認し、証人をつけて、ダレイオスに報告し、処刑を迫る。
この時、王は告発者たちのダニエルを狙った陰謀に気付く。外国から来たばかりの王では仕方ない。
ダレイオスのダニエルに対する信頼は相当なものと分かる。日没まで手を尽くした。
告発者は王に処刑回避は不可の念を押し、結果、ダニエルは獅子の穴に投げ込まれる。
王は、ダニエルが法を犯してでも守り通した神の加護を祈っている。最後は神しか頼るものはない!
ダニエルの信仰心:ダレイオスは、ダニエルの信仰がそれほどすさまじいものと思っていなかったのだろう。
ダニエルは、3人の仲間の時と同様、神が守られることを王に語ったと思われる。神はダニエルを用いて、神の存在をはっきりと示される。同時に、反ユダヤ主義が神によって裁かれることも明白になる。

17節:一つの石が運ばれて来て、その穴の口に置かれた。王は王自身の印と貴族たちの印でそれを封印し、ダニエルについての処置が変えられないようにした。
18節:こうして王は宮殿に帰り、一晩中断食をした。側女も召し寄せず、眠ることもしなかった。
19節:王は夜明けに日が輝き出すとすぐ、獅子の穴へ急いで行った。
20節:その穴に近づくと、王はダニエルに悲痛な声で呼びかけ、こうダニエルに言った。「生ける神のしもべダニエルよ。おまえがいつも仕えている神は、おまえを獅子から救うことができたか。」
21節:するとダニエルは王に語った。「王よ、永遠に生きられますように。
22節:私の神が御使いを送り、獅子の口をふさいでくださったので、獅子は私に何の危害も加えませんでした。それは、神の前に私が潔白であることが認められたからです。王よ、あなたに対しても、私は何も悪いことはしていません。」
23節:王は大いに喜び、ダニエルをその穴から引き上げるように命じた。ダニエルは穴から引き上げられたが、彼に何の傷も認められなかった。彼が神に信頼していたからである。

ダニエルは、獅子の穴へ。蓋は封印された。(縛られて、穴から吊るされて穴の底に落とされる)
この時ダレイオスは断食して一晩中起きていた。
「生ける神のしもべ」・・この声掛けは、この窮地から救い出せるのは、神のみと察していた。
神が御使いを送って獅子の口をふさいだ。ダレイオスは、心底喜んだ。
潔白の証明→誰に対しても悪いことは何もしていない!勿論、神に対しても!
ダニエルには傷一つなく、それは神への信頼の結果である。(真の信仰者の姿)
ダレイオスに対しても、本物の神に対する信仰を示したダニエル。
ダレイオスの行動:ダレイオスは、ダニエルが信仰する神に祈っていたと想像する。ダレイオスもネブカドネツァル王と同様、いと高き神の存在を意識していた。ダニエルに対する高い信頼は、ダニエルの信仰する神へと、ダレイオスを導く。

24節:王が命じたので、ダニエルを中傷した者たちが連れて来られて、その妻子とともに獅子の穴に投げ込まれた。彼らが穴の底に達しないうちに、獅子は彼らをわがものにして、その骨をことごとくかみ砕いてしまった。
25節:それから、ダレイオス王は、全土に住むすべての民族、国民、言語の者たちに次のように書き送った。「あなたがたに平安が豊かにあるように。
26節:私はここに命じる。私の支配する国においてはどこででも、ダニエルの神の前に震えおののけ。この方こそ生ける神、永遠におられる方。その国は滅びることなく、その主権はいつまでも続く。
27節:この方は人を救い、助け出し、天においても、地においても、しるしと奇跡を行われる。実に、獅子の手からダニエルを救い出された。」
28節:このダニエルは、ダレイオスの治世とペルシア人キュロスの治世に栄えた。

ダレイオスは、陰謀を図った告発者たちとその妻子たちを獅子の穴に落とした。
獅子(複数)は空腹であったから、彼らが底に着く前に喰われた。
ダレイオスの喜びは、ダニエルの生存であり、また、生ける神の力であった。
彼は、全国に、ダニエルの神を恐れることを命じた。そして、ネブカドネツァル王のごとく神をたたえる。
この方こそ生ける神、永遠におられる方。その国は滅びることなく、その主権はいつまでも続く。
ダニエルの信仰からくる実践は、ダレイオスに生ける神の存在を示し、異邦人へと伝えられた!
こうしてダニエルは、ダレイオス、そしてキュロスの治世に、大いに用いられ、栄えた。

ダレイオスの書簡:メシア的王国の存在を知ったダレイオス。ダニエルから聞いたのか、示されたのか?異邦人への伝道と共に、各地に離散したユダヤ人への励みとなったと考えられる。

 

6章までに見る預言書的側面
・ネブカドネツァル王の夢(2章)・・メシア的王国前までの歴史(異邦人の時)の預言
・金の像の礼拝拒否事件(3章)・・火による裁き(DKNJ)と、真の信仰者の救いの預言
・ネブカドネツァル王の病事件(4章)・・神に反する7年間の苦悩(DKNJ)と救いの預言
・不思議な文字事件(5章)・・異邦人の時の進展を示す預言
・獅子の穴事件(6章)・・獅子なる神の裁きにより滅ぶ反ユダヤ主義の預言

『異邦人の時が満ちるまで』・・ルカ21:24
人々は剣の刃に倒れ、捕虜となって、あらゆる国の人々のところに連れて行かれ、異邦人の時が満ちるまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます

DKNJを経てメシアの再臨まで続く歴史の展開を指す。

 

※ 『異邦人の満ちる時』 ロマ11:25 は携挙のタイミングを指す表現。

 

子羊であり、獅子なる救い主イエス
奥義が示すイエス様は、人類にとっていけにえとなってくださった子羊なるお方。
そして、大患難時代の最後にさばき主として再臨される御子は、獅子なるお方。
その時、世の反ユダヤ主義者たちは獅子が食い荒らすかのように裁かれ、メシアの王国が建国される。
現代社会は、人々を情報を操作し、リベラルや反ユダヤ主義という神に反する思考へと、密かに導いています。
反ユダヤ主義の台頭は、最近とても著しく見えます。過去の反ユダヤ主義者の末路は哀れな死です。
神の御心に逆らう生き方は、未来においても必ず不幸な結末になります。そのことを決して忘れてはなりません。
私たちは子羊なるイエス様によって導かれ、幸いにも獅子なるイエス様の側にいて裁きを受けることなく、千年王国、新天新地へと入って行きます。
この地にあっては、教会、また個人に患難がありますが、火の炉の3人と、獅子の穴のダニエルのような信仰を目指し、神に全幅の信頼をおいて、これからも皆さんとスクラム組んで歩んで行きたいと思います。

2024年05月18日