ダニエル書4章1節~37節
1節:ネブカドネツァル王から、全地に住むすべての民族、国民、言語の者たちへ。あなたがたに平安が豊かにあるように。
2節:いと高き神が私に行われたしるしと奇跡を知らせることは、私の喜びとするところである。
3節:そのしるしのなんと偉大なことよ。その奇跡のなんと力強いことよ。その国は永遠にわたる国、その主権は代々限りなく続く。
4節:私ネブカドネツァルが私の家で心安らかに過ごし、私の宮殿で繁栄を極めていたとき、
5節:私は一つの夢を見たが、それが私を恐れさせた。私の寝床での、様々な幻想と頭に浮かんだ幻が、私をおびえさせた。
時期的にはBC572年頃(金の像事件から約15年後)。テュロスとの和睦をもって、オリエントを平定した。
ネブカドネツァル王→出生BC642年頃~没BC562年(80歳)⇒出生年には諸説あり。
在位は、BC604年~BC562年である。
王は、帝国の全国民に平和を宣言し、いと高き神(イスラエルの神)の預言を文書で告げた。異邦人がイスラエルの神を呼ぶときに、この言い方をした。
王は、他の神々も認めつつ、イスラエルの神を崇めていた。多神の中の優れた神という位置づけ。
この預言を伝えずにはおられなかった。この神さえも私に味方した!という傲慢さがあったのではないか。これは、メシア的王国の預言である。
王は、何の不安もなく平安に繁栄を満喫していたが、夢が王を怯えさせた。(帝国の王にも恐れがある)
6節:私は命令を下し、バビロンの知者をみな、私の前に連れて来て、その夢の意味を告げさせようとした。
7節:呪法師、呪文師、カルデア人、占星術師たちが来たとき、私は彼らにその夢のことを話したが、彼らはその意味を私に告げることができなかった。
8節:最後にダニエルが私の前に来た。彼の名は私の神の名にちなんでベルテシャツァルと呼ばれ、彼には聖なる神の霊があった。私はその夢を彼に話した。
9節:「呪法師の長ベルテシャツァルよ、私は、聖なる神の霊がおまえにあり、どんな秘密もおまえには難しくないことを知っている。私の見た夢の幻はこうだ。その意味を言ってもらいたい。
10節:私の寝床で幻が頭に浮かんだ。私が眺めていると、見よ、地の中央に木があった。それは非常に高かった。
11節:その木は生長して強くなり、その高さは天に届いて、地の果てのどこからもそれが見えた。
12節:葉は美しく、実も豊かで、その木にはすべてのものの食べ物があった。その木陰では野の獣が憩い、その枝には空の鳥が住み、すべての肉なるものはそれによって養われた。
バビロンの知者たちに夢の意味を王に解き明かす者がいなかった。
・・王が憤慨することを恐れたか、わからなかったか。
非常に高い木が地の中央にあり、どこからでも見えた。
その木によって地のすべての生物は養われた。この木はネブカドネツァル王である。
・・王によって地上は全て養われているとして、王の内にある傲慢を指摘。
ダニエルの年齢:推定50代前半~。王をはじめ、周囲から「聖なる神の霊」がある人と認知されていた。
13節:寝床で頭に浮かんだ幻の中で見ていると、見よ、一人の見張りの者、聖なる者が天から降りて来るではないか。
14節:彼は力強く叫んで、こう言った。『その木を切り倒し、枝を切り払え。その葉を振り落とし、実を投げ散らせ。獣をその下から、鳥をその枝から追い払え。
15節:ただし、その根株は、鉄と青銅の鎖をかけて、地に、野の若草の中に残せ。天の露にぬれさせて、地の青草を獣と分け合うようにせよ。
16節:その心を、人間の心から変えて、獣の心をそれに与え、七つの時をその上に過ぎ行かせよ。
17節:この宣言は見張りの者たちの決定によるもの、この要請は聖なる者たちのことばによるもの。これは、いと高き方が人間の国を支配し、これをみこころにかなう者に与え、また人間の中の最も低い者をその上に立てることを、いのちある者たちが知るためである。』
ひとりの聖なる者が天から降りて来て命じる。その大木を切り倒せ!
ただし根株は残せ。鉄と青銅の鎖をかけて野に残し、雨露に濡れさせよ。
獣の心を与え7つの時を過ぎ行かせよ。(7年間)
(時は、アラム語で季節の意から、3年半説もある)メソポタミヤ地方の季節は夏と冬
聖なる者たちの決定事項で、それは以下のことを示すためである。
神は人間の国を支配し、これを神の御心にかなう者に与える。そして、神が人間の中で最も低い者をその支配の座にすえるということを、人が知るためである。
⇒預言的メッセージ:その究極はイエス様。4章の最大のテーマはこの預言的メッセージと思われる。近未来と遠未来の複合的預言。奥義が潜んでいることになるが・・。
18節:私ネブカドネツァル王が見た夢とはこれだ。ベルテシャツァルよ、おまえはその意味を述べよ。私の国の知者たちはだれも、その意味を私に告げることができない。しかし、おまえにはできる。おまえには、聖なる神の霊があるからだ。」
19節:そのとき、ベルテシャツァルと呼ばれていたダニエルは、しばらくの間驚きすくみ、いろいろと思い巡らして動揺した。王は話しかけた。「ベルテシャツァルよ、この夢とその意味のことで動揺することはない。」ベルテシャツァルは答えた。「わが主よ、どうか、この夢があなたを憎む者たちに当てはまり、その意味があなたの敵に当てはまりますように。
20節:あなたがご覧になった木、すなわち、生長して強くなり、その高さが天に届いて、地のどこからも見え、
21節:葉が美しく実も豊かで、すべてのものの食べ物があり、その下に野の獣が住み、その枝に空の鳥が宿った木、
22節:王よ、その木はあなたです。あなたは大きくなって強くなり、あなたの偉大さは増し加わって天に達し、あなたの主権は地の果てにまで及んでいます。
23節:しかし王は、一人の見張りの者、聖なる者が天から降りて来てこう言うのをご覧になりました。『その木を切り倒して滅ぼせ。ただし、その根株は、鉄と青銅の鎖をかけて、地に、野の若草の中に残せ。彼を天の露にぬれさせて、七つの時がその上を過ぎ行くまで野の獣と青草を分け合うようにせよ。』
24節:王よ、その意味は次のとおりです。これは、わが主、王に届いた、いと高き方の決定です。
25節:あなたは人間の中から追い出され、野の獣とともに住み、牛のように草を食べて、天の露にぬれることになります。こうして、あなたの上を七つの時が過ぎ行き、ついにあなたは、いと高き方が人間の国を支配し、これをみこころにかなう者にお与えになることを知るようになります。
26節:木の根株は残せと命じられていますので、天が支配するということをあなたが知るようになれば、あなたの国はあなたのために堅く立つでしょう。
27節:それゆえ、王よ、私の勧告を快く受け入れて、正しい行いによってあなたの罪を除き、また貧しい者をあわれんであなたの咎を除いてください。そうすれば、あなたの繁栄は長く続くでしょう。」
指名されたダニエルだが、その内容にたじろぐ。(従って、他の知者たちもたじろいだのではないか)
王に促され語り出すダニエル。22~23節で、王の夢を繰り返し、神の決定事項の意味を告げる。
人間界から離れ、牛のように野に住み、草を食べ、雨露に濡れる。
7つの時が過ぎたとき、王は神が人間の国を支配し、神の御心にかなう者に国を与えることを悟ります。
神の支配を知るようになれば、国は王のために堅くたつでしょう。(根株は残せ、の意味)
ダニエルは王に、この勧告を受けて回心し、貧しい者に憐みの心がある政治をすることを提案。
帝国支配の悪:帝国を眼下に見て、王は自分の力ですべてがうまくいったと過信する。それは、貧しい者を苦しめる政策だと分かる。いつの時代も同じこと。
28節:このことはみな、ネブカドネツァル王の身に起こった。
29節:十二か月たって、バビロンにある王の宮殿の屋上を歩きながら、
30節:王はこう言っていた。「この大バビロンは、王の家とするために、また、私の威光を輝かすために、私が私の権力によって建てたものではないか。」
31節:このことばがまだ王の口にあるうちに、天から声があった。「ネブカドネツァル王よ、あなたに告げる。国はあなたから取り去られた。
32節:あなたは人間の中から追い出され、野の獣とともに住み、牛のように草を食べるようになり、こうしてあなたの上を七つの時が過ぎ行き、ついにあなたは、いと高き方が人間の国を支配し、これをみこころにかなう者にお与えになることを知るようになる。」
33節:このことばは、ただちにネブカドネツァルの上に成就した。彼は人の中から追い出され、牛のように草を食べ、そのからだは天の露にぬれて、ついに、彼の髪の毛は鷲のように、爪は鳥のように伸びた。
12か月して、この夢が成就する。つまりこの期間は、王に与えられた悔い改めの期間であった。
王の年齢は、71歳(または68歳)。晩年である。
王は屋上を歩き、眼下に帝国の景色を見て、自分の権威を誇った瞬間、天から声があった。
王は牛のようになり野に住み、7つの時が過ぎて、神が世を支配し、御心にかなう者に与えることを知る。
このことが現実化し、王は獣のようになり、人の中から隔絶された。
獣化妄想という精神障害を発症。
王の頑なさ:最終的に大患難時代まで行き着くほどのイスラエルの民の頑なさとダブってしまう。
獣化妄想:自分を獣と思い行動する。脳の特定の領域に変化や、ストレス、トラウマなどがある。
34節:その期間が終わったとき、私ネブカドネツァルは目を上げて天を見た。すると私に理性が戻ってきた。私はいと高き方をほめたたえ、永遠に生きる方を賛美し、ほめたたえた。その主権は永遠の主権。その国は代々限りなく続く。
35節:地に住むものはみな、無きものと見なされる。この方は、天の軍勢にも、地に住むものにも、みこころのままに報いる。御手を差し押さえて、「あなたは何をされるのか」と言う者もいない。
36節:ちょうどそのとき私に理性が戻り、私の王国の栄光のために、私の威光と輝きが私に戻ってきた。私の顧問や貴族たちに求められて、私は王位に戻り、こうして絶大な権威が私に加えられた。
37節:今、私ネブカドネツァルは、天の王を賛美し、あがめ、ほめたたえる。そのみわざはことごとく真実であり、その道は正義である。また、高ぶって歩む者をへりくだらせることのできる方である。
王の独白
7つの時が終わると理性を回復した王。
彼は、いと高き神を、心の底から褒め称えた。34~35節は、詩編、イザヤ書、ヨブ記などに見られる。
これらの賛美は、王が神の絶対的主権を認めたことを意味する。
その結果、周囲からも乞われて王位に復帰することができた。
悔い改めに要した時間は7つの時。7年か3年半か?(まるで大患難時代を思わせる)
最終的に高ぶる王をへりくだらせた神。その神を賛美をもってたたえる王。
7つの時の終わり:高慢が砕かれる姿は、大患難時代の最後に聖霊を注がれて回心するイスラエルの民か。17節の、最も低い者が上に立つという御業は、メシア的王国→イエス様の再臨。神は、異邦人の最高位の王の人生を用いて人々に未来を知らせた。
支配者でも恐れを持つという事実
神は、世界一の権力者である王に気付きを促したが、王は応答しなかった。
良い時にも、神は気付きを促している。
だからこそ、日々、神と対話し、むしろ良い時にこそ、アドバイスを求めることが必要。
王は、神の絶対的主権を認め、自らをその下に置くことができた。ハレルヤ!
この王は、晩年まで神に用いられ、人々に最終的なメシア的王国を示された。
人は、あくまでも神の御手(管理)の中の小さな存在である。
ネブカドネツァル王を通して示された神のメッセージ
ネブカドネツァル王を通して発生した事件⇒預言的メッセージ(神の御心、真の信仰者への励まし)
①各種金属と粘土の巨大な像の夢
②燃える火の炉からの生還
③王の獣化妄想と回復
一貫して示されているもう一つの内容は、信仰者としての生き方。どんなときも真の神に信頼し、寄り添って確信して生きる姿を常に教えている。それこそが、私たちの徳を高めてくれる神の預言!
こういう信仰をもってどんな環境でも生き抜くとき、その先に神の御国が待っている!ハレルヤ!