エステル記1章1節~12節

事前情報 その1

エステル記の著者、本書の特長

⋆著者:不明。
  ・エズラ、ネヘミヤが書いたとの説や、モルデカイという説など様々あり。
  ・いずれにしてもペルシャの王宮内部情報に詳しいユダヤ人。

⋆本書の特長
  ・神の御名が一度も出てこない。
  ・死海写本には現在、エステル記がない。新約聖書に引用がない。
  ・登場人物に祈りの姿勢が見られず、モーセの律法に関する言及もない。
事前情報 その2

エステル記の時代背景
⋆ペルシア(現在のイランと同地域)は、王クセルクセス(BC486~BC465)の時代。  4人目のペルシア王。
⋆この王は、スサにいた。スサは3つの首都の一つ。(バビロン、エクバタナ・・エズ6:2)
⋆エステル記の出来事は、エズラ記の6章から7章の期間に発生。(エステルがペルシア王 妃となったのは・・BC476年)
⋆物語は、クセルクセス王の第3年(BC483)に、王の政治の場面からスタートする。

 

事前情報 その3

主な登場人物
⋆エステル(ペルシア語の「星」の意味、へブル名はハダサで「ミルトスの木」の意味)
  ・モルデカイのいとこ。ユダヤ人。姿が美しく、顔立ちが良い。
⋆モルデカイ(ペルシア語の名前。エズラ2:2、ネヘミヤ7:7とは別人)
  ・ユダヤ人ベニヤミン族。父ヤイル→祖父シムイ→曾祖父キシュ(バビロン捕囚された人物)
⋆クセルクセス王・・・・ペルシア王。4代目。当時は127州を統治。
⋆王妃ワシュティ
 ・容姿が美しく、王の自慢の妃。
⋆ハマン
  ・クセルクセス王の首長。アガグ人→アマレク(エサウの孫)人の王アガグの子孫。反ユダヤ主義者。

 

1節:クセルクセスの時代、クセルクセスが、インドからクシュまで百二十七州を治めていた時のことである。
2節:クセルクセス王がスサの城で、王座に着いていたころ、
3節:その治世の第三年に、彼はすべての首長と家臣たちのために宴会を催した。それにはペルシアとメディアの有力者、貴族たち、および諸州の首長たちが出席した。
4節:王は彼の王国の栄光の富と大いなる栄誉を幾日も示して、百八十日に及んだ。

・時はクセルクセス王の第3年。王はスサにて政治。
・クシュ→エチオピア。インドからエチオピアの範囲で127州を統治。
・宴会→新共同訳:酒宴
・宴会によって重要事項を決定→議題はギリシャ遠征?。すべては王国の栄誉の表明。
・この時、全州の責任者が集合。メディアはペルシア帝国の一部。(キュロス王の時から)
・この宴会は180日に及んだ。半年の期間を要した打ち合わせ。(当時、1年は360日)
酒宴にかかる費用を想像してほしい。そんな酒宴が毎日開催される。
このこと自体が、帝国、王の栄誉を誇るものと言える。


5節:この期間が終わると、王は、スサの城にいた身分の高い者から低い者に至るまでのすべての民のために、七日間、王宮の園の庭で宴会を催した。
6節:白綿布や青色の布が、白や紫色の細ひもで大理石の柱の銀の輪に結び付けられ、金と銀でできた長椅子が、緑色石、白大理石、真珠貝や黒大理石のモザイクの床の上に置かれていた。
7節:金の杯で酒がふるまわれたが、その杯は一つ一つ種類が違っていた。王室のぶどう酒は、王にふさわしく豊かにあった。

・政治のための酒宴が終わると、王宮の園の庭で新たな酒宴を催す。
・スサの城にいたすべての民(男性)に、7日間の宴会(酒宴)を提供する。
・豪華な調度品、高級な生地や大理石、モザイクの床と、栄華の象徴である。
・金の盃は一つ一つが趣が異なる物。その数を考えると、相当の贅沢。
・王室の葡萄酒が惜しみなく振舞われた。

8節:しかし飲酒は、「強要しないこと」という法に従っていた。だれでもそれぞれ自分の思いのままにさせるようにと、王が宮廷のすべての長に命じていたからである。

・当時の法で、酒の強制は禁止されていた。
・自分の思いのままにさせようとする王の思い。(長→新共同訳:給仕長)

9節:王妃ワシュティも、クセルクセス王の王宮で婦人たちのために宴会を催した。

・男性の酒宴は王が仕切り、女性は王妃ワシュティが担当する。
・半年にわたる打ち合わせは無事に終了し、打ち上げとでもいうような宴会はその豪華さを一層増して、スサの城中を舞台に、華やかに展開して行った。

10節:七日目に、クセルクセス王はぶどう酒で心が陽気になり、王に仕える七人の宦官メフマン、ビゼタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタル、カルカスに命じ、
11節:王妃ワシュティに王冠をかぶらせて、王の前に連れて来るようにと言った。彼女の容姿がすばらしかったので、その美しさを民と首長たちに見せるためであった。

宴会の最終日。王は酒の勢いもあり、自慢の妃を首長たちに披露しようと考えた。
・王の7人の宦官に命じて、王妃ワシュティに王冠をかぶらせ、酒宴に出させようとした。

12節:しかし、王妃ワシュティは宦官から伝えられた王の命令を拒み、来ようとはしなかった。そのため王は激しく怒り、その憤りは彼のうちで燃え立った。

・王妃は拒否し、王は激怒し、憤って燃え上がった。
王妃が来なかった理由は定かではないが、いずれにしても、突然の要請であったことは間違いない。

 

人の栄光と、神の栄光

クセルクセス王が示す栄華は、現代でも想像を超える豪華なもの。周囲に敵はおらず、皆が憧れ、また顔色を伺うような状況。
クセルクセス王は、自らの栄光を示そうとするが、身内の妃から断りを受けてしまう。
これほどに、人間が示そうとする栄光は脆く、不完全である。

 

神の栄光は、お金や地位といったものとは全く無縁である。
神の栄光が成就するとき、招かれた私たちは、どれほどの感動と喜びを爆発させるのだろうか?
今受けている恵みの真価に比べれば、地上の栄華や苦しみは取るに足りないもの。それを覚えてこれからも共に歩んで行きましょう。

 

『今の時の苦難は、やがて私たちに啓示される栄光に比べれば、取るに足りないと私は考えます。』 ロマ8:18

2023年12月29日